アメリカ空軍省は、人と能力への投資、将来の戦力の構築、殺傷力と有効性の実現に焦点を当てた2022年度予算案を5月28日に発表した。1737億ドルの予算要求には、空軍以外にも宇宙軍の予算も含まれている。空軍の予算は1563億ドルで前年2021年度比2.3%増、宇宙軍の予算174億ドルは13.1%増となった。
「この予算は、2030年以降に予想される課題を阻止するため、空軍と宇宙軍の組織化、課題を克服するために必要な訓練、装備するのに必要な道筋を私たちに与えてくれる。現在必要とされている能力に資金を提供するだけでなく、将来の競争に必要な能力に投資するために空軍省がトレードオフを行う必要がある場合にも資金を提供する。」とジョン・ロス空軍長官代理は述べた。
予算の中で多くを占めているのが運用保守費だ。高額で精密部品の塊である航空機は多額の保守コストがかかる。その費用は予算の38%を占め、666億ドルにも上る。米空軍は近代化、他のニーズに対応するための資金と人員を獲得するために古くなった機体の退役を計画。延べ200機の機体の廃止を予算案で提案した。
F-15 C/D イーグル 48機
1979年に就役した第4世代の全天候型制空戦闘機で航空自衛隊の主力戦闘機F-15Jと同型になる。機体年数は40年を迎えており、最新システムを搭載した後継機のF-15EXが今年から配備が始まっている。F-15EXは144機の調達を予定しており、調達に合わせて現在235機あるF-15 C/Dは随時退役していくことになる。
F-16 C/D ファルコン 47機
1984年に就役した第4世代の多用途戦闘機であり、現在の米空軍の主力戦闘機の大部分を占めている。空軍には950機のF-16があり、その内、300機が近代化アップグレードを受けて、2048年まで運用されることが決まっている。更に米海軍が古くなったF/A-18A/B/Cホーネットの代わりとしてF-16を求めており、26機が空軍から海軍に移管を予定するなど、まだまだニーズが高い機体になる。
A-10 サンダーボルトⅡ 42機
1977年に就役した攻撃・近接航空支援機。一時評価が下がることがあったが湾岸戦争以降、対空能力の乏しい相手に対し、威力を発揮。現在のテロリストを相手にした非対称戦争でも近接航空支援機として大きな戦果を上げている。現在281機を保有し、2030年までの運用が決定している。
RQ-4 block30 グローバルホーク 20機
2004年に就役したUAV・無人偵察機。航空自衛隊が導入を予定している。2.2万kmの航続距離を有し、1機で韓国全土を周遊監視する能力がある。MQ-9 リーパーなどと違い、攻撃能力はなく、監視・偵察専門の無人機になる。
KC-135 ストラトタンカー 18機
1957年に就役した空中給油・輸送機。運用から半世紀以上経つが、1980年代に全機、寿命延長のための改修を行っている。その後も何度か近代化改修を重ね、2030年まで運用が予定されている。後継機のKC-46ペガサスの配備は始まっており、順次置き換えられる。
KC-10 エクステンダー 14機
1981年に就役した空中給油・輸送機。KC-135よりも大型で補完する機体でもある。60機が生産され、2010年代に近代化改修を実施、2020年時点で58機が運用中。
C-130H ハーキュリーズ 13機
1975年に就役した輸送機。C-130は1950年代に開発され、今なお生産されている機体になる。1999年には現在の最新モデルであるC-130Jスーパーヘラクレスが就役している。C-130Hはここ数年、退役が進んでいるが需要は高く、同盟国に引き渡されている。
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E-8 ジョイントスターズ 4機
1991年に就役した早期警戒管制機。民間旅客機のボーイング707-320にレーダーなどを搭載して改修された機体。2018年時点で17機が就役しており、2030年までの運用を予定している。
これらの機体の大部分は同盟国、友好国に対して売却・譲渡されるものと思われる。また、コストの削減は機体の削減だけではなく、飛行時間は2021年の124万時間から115万時間へと削減され、コスト圧縮する。