弾道ミサイルを迎撃する日本の2つの防空ミサイルシステムとは

弾道ミサイルを迎撃する日本の2つの防空ミサイルシステムとは
SM-3ミサイル(US Navy)

10月4日、北朝鮮が弾道ミサイルを発射した。弾道ミサイルは日本列島を越え、距離4,600km、最大高度970kmを飛行し、太平洋上の日本の排他的経済水域(EEZ)外に落下した。弾道ミサイルは日本の領土上空を通過したわけだが、日本政府はそれを迎撃しなかった。その理由としては、起動予測で日本領土に被害を及ぼさい無いことが分かっていた事、これは2017年に同様にミサイルが日本列島上空を通過したのに迎撃しなかった理由としても述べている。逆に迎撃すれば、落下物で被害を及ぼす可能性があった。また、迎撃することで日本の防空ミサイルシステムの性能を明らかにしてしまうという理由がある。その最大の懸念が迎撃に失敗した場合だ。失敗しようものならば、マスコミに散々叩かれ、国民に大きな不安をあおることになる。そのため、日本に危害を及ぼさない軌道ならそのまま通過させようというのが迎撃しない理由とされている。では、実際の日本の弾道ミサイル迎撃システムはどうなっているのであろう。現在、日本が配備するミサイル迎撃用の防空ミサイルシステムを紹介する。

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RIM-161スタンダード・ミサイル3(SM-3)

長距離・中距離弾道ミサイルを軌道上の大気圏外で迎撃できる唯一の方法が”RIM-161 Standard Missile 3”こと「SM-3」だ。イージス弾道ミサイル防衛システム(BMD)を構成する一つで、艦船発射型弾道弾迎撃ミサイルとして海上自衛隊や米海軍のイージス艦に搭載されて運用されている。北朝鮮から放たれたミサイルであれば日本本土に来る前に日本海に展開するイージス艦が本来であれば迎撃する。欧州では陸上用の防衛ミサイルシステム”イージス・アショア”でも運用されており、海上、地上双方で運用できる。大気圏外のミサイルを迎撃することを目的にしたSM‐3は向かってくるミサイルをミッドコースフェイズ(中間軌道)およびターミナルフェイズ(終末軌道)に入る段階で迎撃する。最大射程高度は500kmと国際宇宙ステーションなどがある衛星軌道上のミサイルを迎撃できるが、今回の北朝鮮のミサイルは最大高度970kmだったらしいので日本上空では迎撃できなかったかもしれない。これまでのテストでは大気圏外での迎撃に30回以上成功しており、アメリカ側の発表では命中精度は80%を超える。ミサイルはイージス艦のレーダーが捉える情報とミサイルの赤外線シーカーによって誘導される。弾頭に爆発物はなく、運動エネルギーによってミサイルを破壊する。最新モデルは日米で共同開発したSM-3ブロックIIAになり、弾頭の大型化、射程、探知、識別、補足、追尾などの性能が向上。日本は2019年までにブロックIIAを90基を購入し、2021年にも追加契約が発表されている。現在、海上自衛隊のSM-3搭載したイージス艦は8隻体制になる。

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パトリオットミサイル(PAC-3)

もし、SM-3がミサイルを撃ち漏らした場合に迎撃するのが「パトリオット(ぺトリオット)ミサイル」の役目になり、ミサイルを終末航行の軌道上で迎撃する。パトリオットはSM-3と違い、航空機を含めた飛行体を迎撃するための短距離防空ミサイルシステムになり、世界10カ国以上が採用。イスラエルのアイアンドームに並び、世界でも最も実績、信頼ある防空システムだ。多機能フエーズド・アレイ・レーダーやTVM誘導方式の採用、さらにコンピュータの大幅な活用によって各種機能の自動化、迅速化、高精度化が図られている。射程はSM-3と比べると短く20~30Kmの距離で迎撃することになるので、迎撃に成功しても破片などで多少の被害はうけるかもしれない。現在、ミサイル迎撃を目的に採用しているのが「PAC-3」という性能向上型のミサイルになる。PAC-2までは標的近くで起爆して破片で飛行体を迎撃していた。飛行機であればそれでいいが、弾道ミサイルの類になると破片では弾頭まで破壊できないため、「Hit to Kill」という”直撃破壊型”を採用して破壊力が上がっている。その他、探知、識別、補足、追尾といった性能も向上。現在パトリオット PAC-3は全国24の部隊に約50基配備されている。

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Source

https://www.raytheonmissilesanddefense.com/lang/ja/capabilities/products/sm3-interceptor

https://www.mod.go.jp/asdf/equipment/other/Patriot/index.html

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