欧州最大の軍需企業二社がウクライナに兵器工場建設へ

欧州最大の軍需企業二社がウクライナに兵器工場建設へ
Ukroboronprom

ウクライナのゼレンスキー大統領は5月30日、イギリスの軍需企業BAEシステムズと協力し、戦車など兵器の生産・メンテナンスを担う施設をウクライナに設置すると表明しました。実はこれより少し前にはウクライナの軍需企業ウクロボロンプロムとドイツのラインメタルが戦車の修理整備施設を設置するための合弁会社の創設の契約を締結。両社の契約にも、将来的なウクライナ国内での戦車生産が視野に入っています。世界の大手軍需企業二社によるウクライナでの兵器工場建設の動きは同国が今後、欧州の兵器生産の集積地になる可能性を秘めています。

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欧州最大のコングロマリット兵器メーカーBAEシステムズ

BAEシステムズとの提携に関してはこれから正式な契約、会社の創設となり、具体的な内容は明示されていません。BAEは世界でも5本の指に入る巨大軍需企業であり、ヨーロッパ最大規模を誇ります。弾薬から、戦闘機、艦船、戦車にレーダーや軍事システムとハードからソフトまで手広く手掛けており、代表的なところではNATO軍の主力戦闘機であるユーロファイター・タイフーン。英陸軍の主力戦車のチャレンジャー2、英海軍空母のクィーン・エリザベス級も同社製品です。ウクライナ軍には同社のチャレンジャー2戦車や装甲車、AS-90自走砲といった砲兵システムが提供されており、設置される施設は主に地上兵器の整備と生産を目的にしたものになると思われます。

欧州最大の地上兵器メーカーRheinmetall

BAEシステムズに対し、ドイツのラインメタル社とウクライナの国営軍需企業ウクロボロンプロム社は5月に既に戦車及び戦闘車両の修理と整備のための合併会社の設立に関する契約書に署名しています。契約ではラインメタル社が新会社の株式の過半数である51%を保有するので、新会社は同社のグループ会社となり、工場はウクライナ国内に建設されます。

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ウクライナにはレオパルト2シリーズとレオパルト1の両戦車、Pzh2000と今後、提供予定のRCH-155の2つの155mm自走榴弾砲、そして、マルダー歩兵戦闘車、対空自走砲のゲパルトと多くのドイツ製戦闘車両が供与されており、そのほとんどにラインメタル社が関わっており、建設される工場では主にこれらドイツ製兵器が修理整備されるものと思われます。ドイツ製以外にも同じくウクライナに提供されるアメリカのM1A1エイブラムスの主砲やスウェーデンのアーチャー155mm自走砲など、各国の戦車や自走砲には同社製の主砲が多く使用されており、これらウクライナに提供されている他の国の兵器にもメンテナンスを提供できる可能性があります。

KF-51パンター戦車の生産も

KF-51 パンター
🄫Rheinmetall

今回の合併会社の設立は戦闘車両の修理と整備だけではなく、両社と両国の包括的な関係構築が目的であり、将来的にはラインメタル製品をウクライナで共同生産、共同開発する予定で、その中には戦車の生産も視野に入っており、ウクライナで生産したものを海外に輸出することも検討されています。そこで、注目が集まっているのが今年二月のラインメタルのアーミン・パッパーガーCEOの発言です。同氏はドイツ政府の承認があれば同社が開発する最新鋭戦車「KF-51パンター」をウクライナに提供、現地生産すると発言しています。

KF-51パンターは2022年6月に発表された第4世代戦車で主砲にはNATO基準の120mmを上回る130mm滑腔砲を搭載、射撃を含め全ての機能はデジタル化され、ドローンも搭載するなど、まさに新しい世代の戦車です。しかし、まだ、プロトタイプの段階でドイツ軍でさえも、まだ採用の予定はなく、量産は未定です。これをどこよりも先にウクライナに提供するとCEOは述べたのです。もちろん、最新鋭戦車の提供をドイツ政府が承認するわけがなく、リップサービスかもしれませんが、ドイツは現在、次期主力戦車として、フランスと共同でMGCSの開発に取り組んでいます。ラインメタル社も参画していますが、こちらはドイツのKMWとフランスのネクスター・システムズの合併会社であるKNDSが主体であり、ラインメタルとしては、それを牽制する狙いがあるのと、ポーランドが採用を決めた韓国のK2戦車など、ヨーロッパで独占状態だったレオパルト2戦車の牙城が崩れ始めたことで、ウクライナで早々に実績を作って、顧客を囲い込みたいという焦りも考えられます。

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かつて世界4位の武器輸出国だったウクライナ

ウクライナ軍に提供されている西側兵器のメンテナンス拠点は現在、隣国のポーランドや、その隣のチェコにあるとされます。しかし、前線が東部と南部になった今、ポーランドやチェコから国境を超え、前線まで輸送するにはどうしても時間とコストが掛かります。ウクライナ国内に生産とメンテナンス拠点を設けることができれば、時間もコストも削減でき、兵站は大きく改善されます。建設予定地はまだ未定ですが、とはいえ、戦時中であり、ロシア軍の標的になる可能性を考えれば、ロシアより遠い、おそらくポーランド国境付近になるでしょう。

両社ともに戦時中だけの一時的な施設とは考えていないようで、戦後も生産拠点としての運用を考えているようです。ウクライナはソビエト連邦時代から、ソ連製兵器の製造の中心地で戦車や艦船、ミサイルの生産を長年担ってきたこともあり、多くの技術とノウハウを持ち合わせており、かつては世界4位の兵器輸出国でもありました。また、決して喜ばしいことではありませんが、ウクライナは世界で数十年間なかった正規軍同士の大規模戦争を戦っており、しかも、世界2位の軍事力をもっているロシアを相手にしており、貴重な実戦データを得ています。BAEシステムズ、ラインメタルにとっても東側の技術やノウハウ、ウクライナ軍の実戦経験での意見を取り入れることで新たな兵器開発に繋がる可能性を感じているのかもしれません。

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