アメリカ陸軍第10山岳師団は8月1日に行われた軍事演習でM4アサルトライフルを搭載した四足歩行無人地上車両(Q-UGV)、いわゆるロボット犬を披露した。米軍が武器を搭載したロボット犬を公開するのはこれが初となる。
アメリカ陸軍第10山岳師団は2024年8月1日、ニューヨーク州フォートドラムで行われたハードキル作戦訓練に、ライフルを装備した人工知能対応四足歩行無人地上車両(UGV)、いわゆるロボット犬を参加させた。ハードキル作戦はカウンタードローン(c-UAS)のトレーニングになり、ライフルを装備したロボット犬もc-UAS兵器の一つとして参加していたものと思われる。
このロボット犬はアメリカのゴースト・ロボティクス社が開発生産する「Vision60」になり、情報収集、監視、偵察ミッション(ISR)、マッピング、分散通信を行う持続可能なセキュリティのために設計された四足歩行型無人車両(Q-UGV)プラットフォームの軍用グレード版だ。遠隔操作、および自律行動が可能で、搭載されたカメラとセンサーで人間の視界をカバーするよう設計されている。毎秒3m/sの速度で移動、最大3時間稼働できる。Vision60は既に米空軍が基地の警備用に導入。日本の陸上自衛隊でも警備、偵察用途などで試験的に運用している。
写真:陸上自衛隊陸上自衛隊が導入予定のロボット犬「Vision60」が令和6年能登半島地震の自衛隊の支援活動に登場した。Vision60の自衛隊への導入は2023年に発表されていたが、実際の任務で使用が確認されるのは初と思われる。[…]
これまで、非戦闘ロボットとして配備されていたVision60に、米陸軍はアサルトライフルを備えた砲塔を搭載して兵器化。搭載されたライフルは米軍の主力小銃であるM4カービンライフルになり、ライフルを搭載した兵器化の実験が行われている報道はあったが、その様子が公開されるのは今回が初になる。アッパーレシーバーには大きな電子光学スコープが搭載されており、これはAIと連携したターゲティングシステムを採用しているとされており、標的を自動で追跡、照準を行うものと思われる。光学レンズによる人間の視界が届かない偵察ミッションも行う。また、ハンドガード部分にはレーザーポインタが装着されている。砲塔は上下に稼働し、仰俯角を狙え、上空を飛行するドローンを狙う事ができる。米陸軍は昨年、Vision60に次世代分隊支援火器として新しく採用された6.8mm口径のM7ライフルを統合する計画を発表しており、これはその一環と思われる。四足歩行はスピードこそ無いが、あらゆる地形や環境で動作する能力を擁し、車輪式のUGVに比べても、機械的複雑さが軽減され、耐久性、俊敏性が向上しており、複雑な地形、環境下で歩兵の代わり、及び支援を期待されている。
Photo Ghost Robotics 四足歩行ロボットを開発する「Ghost Robotics(ゴースト・ロボティクス)」は10月11日に開催されたアメリカ陸軍のイベントでスナイパーライフルを搭載した4足歩行の無人ロボット「[…]
ライフルを搭載したVision60は開発元であるゴースト・ロボティクス社が2021年10月に「SPUR」と呼ばれる6.5mmクリードモアライフルを搭載したコンセプトモデルを発表するなど、構想自体は以前からあった。また、既に海外ではロボット犬の兵器兵器が進んでいる。
アメリカと並ぶ四足歩行無人地上車両先進国の中国は今年5月、中国人民解放軍とカンボジアと行った合同軍事演習で中国軍がライフルを搭載したロボット犬をお披露目。CQB訓練では歩兵に先行してQBZ-95アサルトライフルを搭載したロボット犬が突入する様子を公開した。中国人民解放軍では既にロボット犬の兵器化実現、ライフルだけではなく、様々な武装を搭載した四足歩行ロボットを実戦配備していると言われており、この分野においては世界で最も進んでいるといっても過言ではない。
また、ロシアでもライフルやロケットランチャーを搭載したロボット犬の開発が確認されている。ただ、ロシア軍が調達、採用したという情報はなく、まだ開発、試験段階にあると思われる。ただ、世界的に四足歩行ロボットの兵器開発が進んでいる。今や空はドローンによる戦いが主流になっているが、四足歩行ロボットの発展と共に地上も近い将来、無人機が主流となるだろう。