FARAの開発中止で米国特殊作戦軍はリトルバードを退役させられない

FARAの開発中止で米国特殊作戦軍はリトルバードを退役させられない
USSOCOM

今年2月、アメリカ陸軍は開発を進めていた将来型攻撃偵察ヘリFARA(Future Attack Reconnaissance Aircraft)プログラムを突然中止することを発表した。このとばっちりを受けたのが実は米国特殊作戦軍(USSOCOM)だった。彼らはAH/MH-6リトルバードの後継ヘリとしてFARAの採用を考えていた。

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USSOCOMは1983年にAH/MH-6を採用して以降、「リトルバード」という愛称のもと、40年以上に渡って運用してきた。ソマリアのモガティシュの戦闘を描いた映画『ブラックホーク・ダウン』ではデルタフォース、レンジャー連隊が搭乗する様子が描かれており、印象に残っている人は多いだろう。だが、リトルバードのベースとなっているOH-6ヘリは1960年代に開発されたもので既に半世紀以上が過ぎており、プラットフォームは旧式化、リトルバードの退役の話がここ数年議題に上がっており、SOCOMは2024年までに退役させるか、使い続けるかの最終決定を下す必要があった。SOCOMの当初の計画では、リトルバードは2030年代半ばまでに退役し、後継として、陸軍が開発を進めていた将来型攻撃偵察ヘリFARAを採用する算段を立てていた。

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将来型攻撃偵察ヘリFARAのキャンセル

米陸軍、将来型攻撃偵察ヘリFARA計画を中止!プロトタイプ完成していたのに

将来型攻撃偵察ヘリFARAは複雑化する現代の戦闘において、アビオニクス(電子機器)によるサイバー強化と広大な戦場を横断する作戦行動能力 、敵の対空防御を突破するための速度を併せ持った攻撃偵察ヘリを開発するプログラムで「AH-64アパッチ」および「OH-58Dカイオワウォリア」の後継機を決める計画になる。米陸軍は次世代機に180ノット(330km/h)以上の巡航速度を要求、戦闘半径は250kmで、かつ、少なくとも90分の飛行時間を有するものを求め、テキストロン社傘下のベル社とロッキード・マーティン社傘下のシコルスキー社の2社が争いプロトタイプの開発を進めていた。計画では2028年に量産、配備を予定していた。既にプロトタイプの開発は終了し、テスト飛行を終えていたが、今年2月、米陸軍は4年という時間、20億ドルを費やし開発してきたFARAの開発を正式に中止した。この時、米陸軍はUSSOCOMに対し、一切相談は無かったと報道されている。

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リトルバードを使い続けるか、代わりを探すか

AH/MH-6リトルバードは1960年代に開発された小型ヘリコプターOH-6をベースに、1980年代、特殊部隊を支援するためにSOCOM向けに開発された。AH‐6が攻撃型で、MH-6が兵員の輸送バージョンになり、AH-6には1分間に6,000発を発射できるM134ミニガンの他に50口径のGAU-19ガトリングガン、ハイドラ70ロケット弾、ヘルファイア空対地ミサイルやスティンガー空対空ミサイルといった様々な兵装を装備できる。MH-6は外装式ベンチを使用して最大4名の兵士を輸送でき、時には狙撃兵を乗せて上空からの狙撃支援を行う。リトルバードの最大の特徴が卵型の小型のボディで高い俊敏性と小回り力で大抵の場所に着陸、接近可能で、兵員を送り届け、回収することできる。リトルバードは陸軍に所属する第160特殊作戦航空部隊「160th SOAR(160th Special Operations Aviation Regiment Airborne)」、通称「ナイトストーカーズ(NIGHT STALKERS)」といわれる特殊部隊専用のヘリ部隊によって運用されている。

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リトルバードは2000年代以降ミッションエンハンストリトルバード(MELB)と呼ばれる近代化改修を行い、ローターを6ブレードにアップグレード、速度、制御機能、ペイロードを向上させ、ドアを拡大し、着陸装置を改良している。Block IIIと呼ばれるこの改修により機体寿命は延び、2034年まで運用は可能になっている。また現在、次世代戦術無線システム、改良されたセンサーシステムの搭載を進めている。ただ、リトルバードの旧式化は否めず、飛行速度はSOCOMが使用するヘリの中で一番遅く、飛行編隊の速度を遅くさせる要因になっている。ハイブリッド化やドライブトレイン、ローラーブレードを改良すれば、高速化を実現できるが、既に運用から40年が経ち、1960年代ベースの設計のヘリの近代化も限界に達している。FARAがそれを解決できる手段だった。SOCOMは運用期限が迫る2034年までに後継機を探して決めるか、他の解決策を検討する必要がある。

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