ウクライナ軍はクリミア半島のセヴァストポリ港を攻撃し、同港に停泊していた黒海艦隊の改キロ級潜水艦ロストフ・ナ・ドヌ(Rostov-on-Don)を撃沈したと発表した。
ウクライナ参謀本部は土曜日の声明で、2日金曜、クリミア半島のセヴァストポリ港を攻撃し、同港の造船所で修理を受けていた黒海艦隊の改キロ級潜水艦ロストフ・ナ・ドヌを攻撃したと発表した。参謀本部の発表によれば、同潜水艦はその場で沈没した。ウクライナ国防省もSNSで「ロシアの潜水艦がセヴァストポリ港で攻撃を受け、黒海の底に沈んだ。戦士の皆さん、よくやった」と投稿、攻撃を行った兵士を労った。ウクライナ軍参謀本部は、潜水艦への攻撃に加え、同日にS-400対空ミサイル発射装置4台にも大きな損害を与えたとも発表している。
潜水艦の沈没は確認できず
L'Ukraine affirme avoir frappé et coulé le sous-marin d'attaque diesel-électrique de classe Kilo de la marine russe, le Rostov-sur-le-Don, lors d'une attaque contre Sébastopol.https://t.co/gI7kmbNh2a
— Olivier🚀Dassonville (@TheDarkPixel) August 4, 2024
ウクライナ参謀本部は潜水艦の沈没を示す証拠は提示していない。ただ、衛星画像の比較では、潜水艦が停泊していたとされる造船所が攻撃を受けた事は明らかになっており、港湾施設の損傷を確認、ロシアの軍事ブロガーも認めている。ロシア国防省は何もコメントを出していない。しかし、造船所は屋根付きで、その中に停泊、修理を受けていた同艦が沈没したかまでは確認できていない。
改キロ級潜水艦ロストフ・ナ・ドヌは昨年9月、セヴァストポリ港の乾ドックで修理中にウクライナ軍の巡航ミサイル「StormShadow/SCALP」の攻撃を受けた。同じく、同港で修理を受けていたロプーチャ級揚陸艦「ミンスク」は修理不可能な損傷を負い、ロストフ・ナ・ドヌも船体に大きな穴が空いた。潜水艦の方も当初は修理不可能と思われていたが、おそらく破損したのは潜水艦の外殻で内殻は無事だったものと思われ、ロシア国防省は修理可能と述べ、実際に修理を行っていた。
ウクライナ海軍司令部は7月に黒海艦隊がクリミア半島から完全に撤退したと発表している。ウクライナ軍の攻撃によって、艦艇の損害が後を絶たないためだ。多くはロシア南東部のクラスノダール地方のノヴォロシースクに拠点を移している。ここはセヴァストポリから直線距離で170km以上の距離にあり、修理中だったロストフ・ナ・ドヌは避難する事ができなかったのであろう。
キロ級潜水艦
キロ級潜水艦は1982年にソ連海軍で就役が始まったディーゼルエンジンを搭載する通常動力型の攻撃型潜水艦。何度か改良を重ね、現在ある艦は1990年代半ばに就役が始まった「プロジェクト636」モデル以降の艦になり、黒海艦隊に配備されている艦は全て”改キロ級”と呼ばれる「プロジェクト636.3」になり、2014年に就役が始まった最新艦だ。ロストフ・ナ・ドヌーはその2番艦になり、2014年12月に就役した。6つの533mm魚雷発射管を備え、最大18発の魚雷、若しくは最大10発のカリブル巡航ミサイルを搭載することができる。黒海艦隊の第4独立潜水艦旅団には6隻のキロ級潜水艦が在籍、内4隻が侵攻前に黒海に配備されていた。キロ級潜水艦は侵攻開始当初から巡航ミサイルの発射母艦として使用されていた。黒海艦隊はウクライナの無人自爆艇によって、多大な損害を被っているが、潜水艦は潜水中であれば攻撃されることはほぼ無いので、黒海の哨戒任務にあたっており、ウクライナ穀物輸出は支障をきたしている。