兵力不足に悩むウクライナ軍だが、兵士の士気を高めるため、ウクライナ政府内閣は戦果に応じて兵士に特別休暇を与える事を承認した。
ウクライナメディアのキーウ・インディペンデントによると、ウクライナ内閣は5月21日火曜、ロシア軍装備品の破壊を確認できたウクライナ軍兵士に追加の特別休暇日を与える措置を承認した。報道によればロシア軍の船舶または航空機の破壊が確認された場合は、その兵士には5日間の休暇が与えられ、対空防衛システムまたはヘリコプターの破壊の場合は4日間、戦車または戦闘装甲車の破壊の場合は3日間の休暇が与えられる。自爆ドローンやその他の車両など、他の種類の軍事装備の破壊には、より短い休暇日数が与えられるとなっているのでおそらく1日か2日だろう。ここで気になるのが対象となる兵士の範囲だ。
例えば、防空ミサイルシステムでロシア軍機を破壊した場合はどうなるのか。防空ミサイルシステムは発射装置、レーダー、火器管制機と部隊単位、複数人で運用するので撃墜しても個人の戦果にはならない。アメリカなどから供与されているパトリオットシステム一式の運用には90人という中隊規模の人数が必要と言われている。ただ、パトリオットは一旦セット、配備が整えば僅か3人という最小人数で運用が可能になるので、もし、３人で運用中の撃墜であれば、３人が交代制で休暇をとるのか、その場にいなかった他の隊員には休暇は与えられないのか。戦車の場合はソ連式のTシリーズの場合、車長、砲手、操縦手の3人が搭乗、西側製であれば、それに装填手が追加され、4人になる。戦車の砲撃で破壊すれば流石に乗員全員に休暇は与えられるであろう。これは、他の戦闘車両でも同じだろう。
その点、携行式の防空ミサイルMANPADSや対戦車ミサイルなどであれば、一人または2人一組で運用するので、戦果は明確だ。フォーブスの報道によれば、ウクライナ軍第79独立空中強襲旅団のミサイル兵でコールサイン「ハハウズ」は、アメリカ製のFGM-148ジャベリン対戦車ミサイルシステムでロシア軍の戦車や戦闘装甲車を40両以上破壊し、さらに20両以上を損傷させたと伝えられる。ハハウズは月当たり3両の戦果を挙げていたので、毎月9日間の特別休暇が与えられることになる。侵略を受ける側のウクライナはこれまで自国兵士に対して、戦果に応じたボーナスの明確な基準はなかった。それに対し、投降するロシア兵には戦車やヘリといった装備品と共に投降した場合は数十万ドルの報奨金を与えていた。2年以上に及ぶ戦争で前線の兵士は疲弊。平時と違い戦争に休みなく、兵士の間には不満が募っていたとされている。戦果を挙げるということは優秀な兵士であり、それが前線から居なくなるのは部隊にとっては痛手だが、戦争が長期化、終わりが見えない中で士気の維持が難しくなっていたのであろう。
ロシア軍は報奨金を授与
侵略を行うロシアは西側製兵器を破壊した兵士にボーナスを与えている。ウクライナが休暇を与えるいるの対し、ロシア軍のボーナスは金銭だ。ロシア国防省は2023年6月、ウクライナ軍が使用しているドイツ製レオパルト2戦車やアメリカが提供しているブラッドレー歩兵戦闘車など西側製の兵器を破壊したロシア軍兵士に報奨金を支払うと発表した。戦車の場合は10万ルーブル(約17.5万円)、戦闘装甲車の場合は5万ルーブル（約9万円）が支払われる。空軍のパイロットや防空部隊のオペレーターは、ウクライナ軍の航空機やヘリコプターを１機撃墜するごとに30万ルーブル（約52万円）が支払われる。弾道/巡航ミサイルやHIMARSロケット弾の迎撃に対しても同額の報酬が支払われる。ロシア国防省は2023年6月時点で1万人以上のロシア兵が報奨金を受領していると発表していた。ただ、この報奨金は上がっているようで、ロシア国防省は今年4月、レオパルト2戦車を破壊した兵士に50万ユーロの報奨金を与えており、昨年発表した額の実に5倍だ。
ただ、ロシア軍内では約束された報償、戦死した兵士の給与や見舞金が家族に支払われないといった問題がある事が報じられている。また、囚人兵には一定期間、兵役に就けば恩赦を約束して入隊させていたが、囚人兵の扱いがワグネルからロシア国防省に移管されるとそれらの約束が反故にされるなど、約束が守られないケースが散見している。特に報奨金は生きて後方に戻らないと支払われないようだ。
少しの間でも家族や愛する人と過ごせ、温かい食事、ベッド寝られる休暇と、金銭、あなたならどっちを選ぶ。
