魚雷は通常、艦船や攻撃型潜水艦から有人操作によって発射されるものです。しかし、米海軍が開発を進めている「Hammerhead(ハンマーヘッド)」は海底に魚雷を設置してセンサー感知によって魚雷を発射する無人魚雷システムです。
概要
「Hammerhead(ハンマーヘッド)」は米海軍海洋システム司令部 (NAVSEA) とプログラム執行部の無人小型戦闘機部隊(PEO USC)が開発・計画を進める新しい無人魚雷システムです。
ハンマーヘッドは日本名でシュモクザメ(写真上)を指し、左右に張り出した特徴的な頭部は微弱な電気を感知する優れた器官です。この兵器も優れたセンサーを持ち合わせており、海底に潜み、付近を航行する敵潜水艦から漏れる微弱な電波や兆候を搭載されたセンサーで検知すると、搭載されたホーミング魚雷を発射します。マンガ・アニメ『紺碧の艦隊』の見たことある人なら「ピンッ」きたかもしれませんが、まさにあの作品に登場するような海底魚雷です。
ハンマーヘッドは以下6つのモジュールで構成されています。
・発射管のカプセルモジュール
・海底に係留させる係留モジュール
・動力を供給するエネルギーモジュール
・敵潜水艦を検知するセンサーモジュール
・攻撃の意思決定を行うコマンド&コントロールモジュール
・通信モジュール
カプセルモジュールに搭載される魚雷は”M54対潜水艦用短魚雷(写真上)”になり、これはホーミング(追尾)魚雷で、射程は約10kmです。自律型兵器としても機能しますが、友軍への誤射を防ぐため、敵を検知した際は通信モジュールによって近くの船や潜水艦に送信され、コマンド&コントロールモジュールによって最終的には人間によって攻撃の意思決定がされると思われます。アクティブ化・非アクティブ化も柔軟に可能のようで友軍が航行する際は非アクティブ化させることができます。
米海軍はハンマーヘッドをこちらも現在開発中の無人大型潜水艦(XLUUV)に搭載して配置することを計画しています。
2021年度には最大30基のプロトタイプの契約を結ぶ予定であり、2023年度にはテストが行われる予定です。
現代の機雷
第二次世界大戦時は敵の艦船や潜水艦の航行を妨げるために海の地雷といわれる”機雷”が用いられ、成果を上げました。これに一番被害を受けたのは日本海軍であり、軍艦、潜水艦、商船を含め延べ266隻もの船を機雷によって失っており、機雷は海上の侵攻を防ぐ上で非常に有効です。機雷を除去するには掃海艇が必要であり、掃海艇が来るまで進軍を止めることができます。しかし、ハンマーヘッドは機雷よりも水深が深いところに設置され、検知することは難しいかもしれません。
対ロシア・中国
ハンマーヘッドは潜水艦大国のロシア、海洋進出を活発化させている中国を睨んだものとされています。潜水艦の性能が上がる中、広大な海中を隙間なく監視することはほぼ不可能です。それをハンマーヘッドで補うと共に、両国が開発する水中ドローンへ対抗する目的もあるとされます。