オーストラリアの軍事シンクタンクはアメリカ空軍が先日発表した新しいステルス戦略爆撃機B-21は1機でF-35Aステルス戦闘機6機分に相当すると分析をし、国にB-21爆撃機を長距離攻撃オプションとして検討する必要があると述べた。
US Air Forceアメリカ空軍は12月2日金曜、最新鋭の戦略ステルス爆撃機「B-21 Raider(レイダー)」を正式にロールアウトした。[adcode]B-21を開発するNorthrop Grumm[…]
ステルス戦略爆撃機「B-21 Raider(レイダー)」は今年12月2日に米空軍が正式にロールアウトしたばかりの最新鋭機。B-2スピリット爆撃機の系譜を継ぐ、ブーメランのような形状のフライングウィングレイアウトを採用したステルス機でB-2よりも小型され、コストは3分の1にステルス能力が向上している。2030年代の就役を予定しているが、まだ、機密情報が多く、細かいスペックには付いては一切公表されていない。しかし、オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)の専門家は現在ある情報をもとに機体性能など分析、B-21はF-35Aにはない長距離攻撃、6機分のF-35Aの攻撃能力に相当するとして、対中国を念頭にオーストリア空軍への配備を提案している。
予想されるB-21のスペック
爆撃機の肝となる航続距離とペイロードに関する情報は未だ公開されていないが、ASPIの専門家はB-21が9,600kmの航続距離能力を持ち、10トンの武器を運ぶことができると示唆している。B-2の航続距離が約12,000km、ペイロードが17トンになるので、B-21は小型された分、これらの能力は下がったとみている。価格については1機あたり、7億ドル(950億円)と推定。B-2の現在の価格が20億ドル(2700億円)とされ、B-21はその3分の1とされている。
中国に対応するために長距離攻撃能力が必要
オーストラリアは中国の脅威が増す中、長距離攻撃可能な兵器を求めている。中国とオーストラリアとの距離は直線で7,400km。オーストラリア軍が保有するF-35Aの有効戦闘半径は約1,000kmに過ぎず、空中給油機を使用しても1,500kmまでしか拡張されない。オーストラリア空軍は最近、F-35Aに搭載可能な統合空対地スタンドオフミサイルJASSM-ERを取得しているが、これの射程が930kmと合わせても2,500kmしかなく、中国には届かず、台湾はもちろん、いざという時、準同盟国に準ずる日本を支援することもできない。それに対し、中国は戦闘半径3,500km、射程2,500kmの巡航ミサイル「長剣-10」を搭載するH-6戦略爆撃機を所有。中国が基地化し、一方的に領有を主張している人工島基地の南沙諸島からオーストラリアまでは4,500kmになり、オーストラリアのほとんどを攻撃範囲に捉える。
戦時下では空中給油機の運用はリスクが伴い、更にF-35Aに空中給油機を随伴させれば、ステルス機の意味がなくなるので、F-35Aも戦時下では結局1,000kmの戦闘半径しかなく、オーストラリアの地理的要因を考えれば、F-35Aは領土防衛、迎撃用の局地戦闘機でしかない。
そこで、必要なのが長距離攻撃能力を有するB-21戦略爆撃機というわけだ。B-21は1機で6機のF-35Aが搭載できる兵器を収容すると推測されている。つまり、1機のB-21で6機分のF-35Aの攻撃力を兼ねることができ、且つ、空中給油機も必要とせずに南沙諸島を攻撃範囲に捉えることができる。機体も中国より遠い南部を拠点に運用することができる。専門家は1個飛行隊分12機が必要と考えているが、その総取得費用はもろもろわせて250~280億ドル、年間の運用コストは5億ドルと莫大な費用が掛かると予測。
地政学的に見ればオーストラリアが必要とするのは確かにF-35よりもB-21の方が適していると思えるが、これだけの費用を投じて、取得する必要があるのかはコストともたらすであろう安全保障の側面など様々な利益を天秤にかけて比較する必要がある。そもそも、アメリカがいくら同盟国だからと言えど、軍事機密情報の塊であるB-21の国外への販売をそもそも許可しないかもしれない。
Source
Australia should examine Plan B-21 as it weighs up long-range strike options