アメリカはロシアへの反転攻勢を進めるウクライナに対し、戦術の懸念を示した。ニューヨークタイムズの報道によれば、米国当局者はウクライナ軍の現在の戦術に対し強い不満を募らせている。6月に始まったロシア軍に対するウクライナ軍の大規模な反転攻勢。ウクライナ軍は進軍を進め、少しづつ領土を奪還しているものの、当初の計画より大幅に進軍は遅れている。実際、ウクライナと米国を始めとするNATOは年内の勝利目標を1年以内に延期している。
これらの遅延は6月のウクライナ南部ヘルソン州のロシア支配地域にあるカホフカ・ダムの破壊、大量に埋設された地雷に、何重もの防衛線といったロシア側のなりふり構わぬ防御戦略による影響も大きいが、アメリカ側はウクライナの戦術にも問題があることを指摘している。
ウクライナでの戦線は現在、東部と南部と2つに分かれているが、ウクライナ軍は現状、この2つの地域に均等に部隊を配備している。これについてアメリカ側は南部に戦力を集中すべきと苦言を呈しているのだ。「兵力集中の原則」に従えば兵力の数が多ければ多いほど優位性は高くなり、戦力が仮に同数だとしても戦闘力が高いほうが勝つ。その場合、西側の近代的兵器を配備し、士気が高いウクライナ軍に分がある。この原則に従えばどちらか一方に戦力を集中すべきで、戦争に勝利する上で戦術的価値が大きいのは南部ヘルソン及び、クリミアの奪還になる。南部戦線に集中しろというのは東部バフムトでの戦闘が激しかった今年1月にも言われていた。
また、ウクライナ軍の多くはNATO式の戦術、戦法を教え込まれ、それを採用していたが、自分たちが熟知している戦法に戻したという情報もある。というのもNATO式の戦術は歩兵、砲兵、機甲部隊、航空戦力といった様々な兵科が一緒になった”諸兵科連合”で機能することをベースにしているが、航空優位性がとれていないウクライナ軍には諸兵科連合で最も重要な”航空戦力”がない。逆にアメリカ軍やNATO軍が制空権がない状況で戦ったことがほぼ無く、その点の戦い方についてはウクライナ兵の方が熟知しているのかもしれない。
今後、反転攻勢を進める上で、この点の擦り合わせが重要になってくるかもしれない。この点が双方で折り合わず、これといった戦果が見えない場合、西側からの軍事支援に影響を及ぼすという懸念する声もある。
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