ウクライナメディアのキーウ・ポストはアメリカが旧ソ連のカザフスタンから81機の旧式のソ連製戦闘機を購入したと報じました。カザフスタンは昨年10月から100機の中古戦闘機を競売に掛けていました。しかし、アメリカがなぜ?旧式のソ連製兵器を購入したのでしょう。
旧ソ連の構成国で中央アジアのカザフスタンは2023年10月、新たな戦闘機の購入のため、自国が所有する古くなったソ連製戦闘機の売却を目的に、国有資産の売却電子プラットフォームに掲載、競売に掛けました。オークションに出品された軍用機は主に1970年代から1980年代に製造された117機のMiG-31、MiG-27、MiG-29、Su-24になり、これまで国内の航空部隊で使用されていました。今回、アメリカがその7割にあたる機体を購入したとの報道です。オークションに参加できるのは認可された法人のみになり、日本の官公庁が行う競売と同様、カザフスタン政府に認可された企業しか競売には参加できません。また、外国企業の入札参加は認められていないため、アメリカは海外のオフショア企業を通して入札したと報じられています。81機の売却額は10億カザフスタン・テンゲ、ドル換算で226万ドルで、1機当たりの平均価格は1万9300ドルと2万ドルに満たない額です。81機の内訳は不明ですが、カザフスタンは10機のMig-31を100万ドル以上の額での売却を狙っていたので、それと比較すると売却額と希望額には相当開きがあるように感じます。
ウクライナへの支援目的
アメリカがこの中古の機体を購入した目的は公式に明らかにされていませんが、ウクライナ支援の為とされています。ウクライナ空軍の主力戦闘機はMig-29、Su-27、Su-24といった旧ソ連製です。とはいえ、カザフスタンが売りに出した機体は既に耐用年数を超えており、飛行不能な状態であり、売却も解体した状態で引き渡されるため。単純に戦力として使用することは不可能です。そのため、使い道として部品どりとされています。ウクライナ空軍の機体は使用頻度が上がっており、パーツの耐久性は著しく低下しています。しかし、カザフスタンの機体は部品どりとしても役割を果たせなくなったと言われており、どこまで利用できるかは不明です。ただ、ウクライナには航空機メーカーのアントノフを抱えるなど、航空機に関してはカザフスタンよりも多くのノウハウを持ち合わせており、有効利用できる可能性があります。また、使用できなくとも空港などで囮に使用できます。購入価格も81機で226万ドルなので、アメリカにとっては小銭にすぎないでしょう。
旧ソ連でロシア主導の軍事同盟「集団安全保障条約機構(CSTO)」に加盟するカザフスタンはこの81機の戦闘機のアメリカの売却を公式には認めておらず、国営武器輸出入業者カズペツセックスポルトはウクライナへの売却は否定しています。ただ、ウクライナ侵攻以降、カザフスタンはロシアから距離をとっており、ウクライナ東部のドネツク州とルハンシク州を独立国家としてロシアが一方的に承認した際も独立を認めないと発言しました。また、ロシアから撤退した欧米企業の誘致を図るなど欧米よりの姿勢も見せています。新しい戦闘機もこれまでソ連/ロシア製ではなく、欧米製の戦闘機の購入を検討しているとされ、2023年11月にはフランスのマクロン大統領がカザフスタンを訪問した際にラファール戦闘機の商談が行われたと報道されています。