アメリカ陸軍は12月5日、選定を進めていた「将来型長距離強襲機」(FLRAA)にTextron社傘下のBell・Helicopter社が開発するティルトローター機「V-280 Valor(バロー)」を採用することを発表。13億ドルを上限とする初期契約を同社に与えました。
Bell V-280 Valor chosen as new @USArmy Long Range Assault Aircraft.
— Bell (@BellFlight) December 6, 2022
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FLRAAは老朽化した多用途ヘリのUH-60ブラックホークの後継機を開発するプロジェクトで2019年より、米陸軍で計画が始まります。計画にはベル社の他にUH-60を開発するロッキード・マーティンの子会社シコルスキー社とボーイング社が共同開発する「Defiant-X」も参加していましたが、開発が遅延。その影響もあってか米海兵隊のV-22オスプレイでティルトローター機の実績があるベル社が開発するV-280が選ばれました。米軍としてはV-22に続く2機目のティルトローター機になります。
UH-60 ブラック ホークは米陸軍及び、世界で最も多く配備されている軍用ヘリコプターであり、何度も改良を経て、その性能はまだ世界一と言ってもいい機体です。しかし、40年以上にわたって運用されており、旧式化が進んでいました。FLRAAの基準は、燃料を補給せずに4,520kmを飛行できることと、最大巡航速度520km/h、キャビン内部のペイロードは1500kg/㎡、12名の部隊を最前線の戦域に迅速に派遣できる柔軟性を備えていることです。V-280はこれらをクリアをすることを示しています。UH-60の航続距離は2,200km、最大巡航速度278km/h、ペイロード5220kg、乗客11名です。
V-280とは
V-280はV-22 オスプレイを開発するベル社とロッキード・マーティン社によって開発されたティルトローター機です。V-22での開発経験を活かして開発されており、垂直離着陸とホバリング、直線飛行を可能にする傾斜可変機能を備えたローターを採用。しかし、V-22と違うのはエンジン・ナセルは固定でローター部分のみ可変させているので、V-22と比べ可動部分が少なくなり構造を簡単にすることができ、エンジン・ハウジングが邪魔にならず、機体への出入りがより容易にかつ安全にできるようにりました。
V-280の主翼には、直線翼を採用、これにより両翼のエンジンを繋ぐドライブシャフトの構造が簡単になっており、一方のエンジンが停止した場合でも、反対側のエンジンだけで両方のローターを回転させることを可能にしています。
機体には前後左右上下6つのカメラが搭載。撮影された映像はパイロット用ヘルメットのHUDに統合して投影され、機内から全方位の状況を確認することができます。
2017年12月に初飛行、2021 年には214時間以上飛行し、低速の機動性と長距離巡航能力、および565 km/hの最高巡航速度を実証。2030年頃の就役を予定しています。米陸軍は現在約2000機のUH-60を運用していますが、これを全て置き換えるわけではなく、V-280就役後もしばらくは運用が続く見込みです。