F-16を自律飛行可能な無人戦闘機にするVenom計画が本格始動

F-16を自律飛行可能な無人戦闘機にするVenom計画が本格始動
USAF

アメリカ空軍は4月3日、第96試験航空団と第53航空団がF-16ファイティング・ファルコンを自律飛行可能な機体に改修する「Venom(ヴェノム)計画」に参加するために準備された最初の3機の機体を受領した事を発表した。

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米空軍は、有人機であるF-16を自律飛行や有人機と協調作戦が可能な無人戦闘機に改修するプロジェクト「ヴェノム・プロジェクト」を正式に開始する。Venom計画のVenomは「Viper Experimentation and Next-gen Operations Model」の略で、日本語に直訳すると「バイパー実験と次世代オペレーションモデル」という意味になる。ViperはF-16の非公式名称だ。Venomは有人機であるF-16を自律飛行可能な無人機に改修する計画として2023年5月に発表され、2024年度の予算として5000万ドルが計上されていた。使用される最初の3機は、改修のため、フロリダ州エグリン空軍基地に飛来した。少なくとも1機は第57航空団兵器学校第16飛行隊所属のF-16Cブロック42J型と推測されている。

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Venom計画

ヴェノム計画の目的はF-16に自律飛行のための人工知能(AI)を搭載し、有人機と随伴飛行する協調戦闘機「CCA(collaborative combat aircraft)」としての新しい役割を与える事だ。アメリカ空軍は開発中の第6世代戦闘機NGADとのF-35ステルス戦闘機に、このCCAを組み合わせることを計画している。基本的な組み合わせは1機の有人機に対し、2機のCCAが随伴する形だ。有人機のパイロットは機内からCCAに指示与え、例えばCCAに斥候として先に作戦空域に飛ばしたりして、周囲のターゲット情報を取得、AIはこれら取得した情報を分析、パイロットに予想される脅威について警告を与え、安全なルートなどが提案される。またパイロットは得られた情報によって、作戦を考え、例えばCCAを囮として飛ばし、敵の防空システムを起動させ、詳細な位置を特定。そして、別のCCAに搭載された兵装で攻撃といったことが可能になる。そして何より、高価なNGAD、F-35、貴重なパイロットの損失を抑えることができる。

大量の在庫を抱えるF-16

米空軍は200機のNGADと300機のF-35にCCAを組み合わせる事を計画している。つまり1000機のCCAを生産する計画だ。何機のF-16がCCAに改修されるのかは不明だが、大量の数を揃える上でF-16は打ってつけの機体である。F-16はアメリカのジェネラル・ダイナミクス社によって1970年代に開発、1978年に運用が始まった冷戦期の第4世代多用途戦闘機。これまで延べ4,500機以上が製造され、20カ国以上が採用したベストセラー戦闘機だ。現在、世界で2000機以上が運用されているが、米軍では約950機が運用されている。更に600機ほどが退役後にモスボールとして保管されているとされる。つまり、米軍は1500機以上のF-16を所有している。F-16は半世紀に渡り米空軍の主力戦闘機の役割を担ってきたが、現在、その座はF-35に譲りつつあり、毎年数十機ペースで退役が進んでいる。1000機というCCAを用意する上ではF-16は既に数があり、最適の機体になる。

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アメリカ国防高等研究計画局(DARPA)は2023年2月に、AIを搭載したF-16の自律飛行に成功し、模擬戦闘によるドッグファイトも行っており、ある程度の実証が済んでいるのも強みだ。ただ、この時は万が一の際に機体を制御できるよう、パイロットが搭乗していたので、完全な無人機ではなかった。

CCAはもちろん、F-16だけではない、米空軍は今年3月にCCAの開発競争に参加する企業と設計・製造契約を締結したことを発表している。参加企業は5社でボーイング、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマン、アンドゥリル、ゼネラル・アトミックスといった名だたる軍事企業が参加して行われ、最終的に2社に絞られる。米空軍は2025~2028年度にかけて1700~1900万ドルの開発予算を計上、今後5年間で約1億2千万ドルの予算を投入する予定で、2029年までに100機のCCAを確保する計画だ。1000機のCCAプロジェクトの予算規模は最終的に60億ドルになる予定だ。F-35戦闘機を開発製造するロッキード・マーティン社はF-35と連携する無人機開発のために2022年から1億ドルの自己資金を投資しており、この分野では先行している。

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