ロシア軍は31日、ウクライナ南部オデーサの港に停泊していたウクライナ海軍の最後の主要艦とされる中型揚陸艦ユーリ・オレフィレンを撃沈したと発表しました。
現状、これはロシア軍側の一方的な主張で確認は取れておらず、ウクライナ国防省も何もコメントしていません。まし、沈没が事実とあれば、港というある程度パブリックな場所を考えると、何かしらの画像や動画がSNS上に出回りそうですが、現状、そられは確認できていません。現在、確認されているのは少なくともと5月29日時点ではオデーサ港にユーリ・オレフィレンは停泊していなかったことです。ロシア軍が沈没を主張したい揚陸艦ユーリ・オレフィレンとはどういった船なのでしょうか。
スペック
Yuri Olefirenko(ユーリ・オレフィレン)はProject 773、ポルノクヌイ級と呼ばれる揚陸艦で1960年代にソ連とポーランドによって設計、ポーランドで建造されました。排水量1,192トン、全長81.3m、速度18ノット(33km/h)。250トンの積載量を擁し、12両のBMP-2歩兵戦闘車、4両の主力戦車、250人の兵士を搭載、運ぶことができます。武装にはストレーラ 2地対空ミサイルシステム、30 mm AK-230対空砲、140mmオゴン18連装ロケットランチャーを搭載しています。
紆余曲折の歴史
同艦は1970年にソ連海軍向けの船として建造され、同年にSDK-137として就役しています。1973年にはAK-230砲によってイスラエル軍のF-4ファントムを撃墜し、レッドスター勲章が授与されています。その後、1991年にソビエト連邦が崩壊、同艦が在籍していたソ連黒海艦隊が1994年にロシア黒海艦隊とウクライナ海軍に分割されると同艦はウクライナ海軍に引き渡され「キロヴォグラード」と名付けられます。2014年のクリミア侵攻ではロシア軍に拿捕されるも、その後、返還されます。2016年にはマリウポリ近郊で殺害されたウクライナ海兵隊員にちなんで現在の名前ユーリ・オレフィレンに改名されます。
Older video showing the Ukrainian Navy pr. 773 landing ship "Yuri Olefirenko", which was reported sunk this week in Odessa when it was hit by a Russian missile, was to conduct MLRS attacks on Russian position along the coastline of occupied Kherson.#OSINT #UkraineRussiaWar️… pic.twitter.com/m7Haktk5WU
— OSINT (Uri) 🇺🇦 (@UKikaski) June 1, 2023
ロシアによる侵攻が始まった2022年2月、ウクライナ海軍の主要艦はロシア軍の攻撃によって沈没、または拿捕されます。ウクライナ海軍の旗艦であるヘーチマン・サハイダーチヌイはロシア軍に撃沈、または拿捕されるぐらならと自沈を選びます。そんな中、ユーリ・オレフィレンはウクライナ南部のオチャコフに停泊していました。昨年6月に同艦は16発に及ぶ、ロシア軍の砲撃を受けるも回避行動をとり、何を逃れます。同月、船員はゼレンスキー大統領より勲章が授与されます。その5か月後にロシア軍に甲板からWM-18ロケットランチャーを発射して攻撃を行っています。
ウクライナ海軍は昨年時点で主要艦の多くを失っており、残っているのはほぼ小型船のみで、全滅に近い状態でした。艦齢50年以上を迎える同艦は老朽化、護衛無しでは揚陸艦として任務を行える状態ではないので、沈没が事実だとしてもウクライナ軍への影響は限定的と思われます。