米国務省とトランプ政権は台湾に新たにミサイルを売却することを決めた。この決定に対して中国はいつものように『1つの中国』を振りかざし、台湾への武器売却に反対しており、ミサイル製造に関わっているロッキード・マーチン、ボーイング、レイセオン・テクノロジーズといった米国企業に制裁を加えると明らかにしている。これらは各メディアから報道されている通りだ。しかし、肝心の売却されたミサイルはなんだったのだろう?売却されるミサイルについて紹介する。
売却されるミサイルの内訳
米国国防安全保障協力局(DSCA)は21日に国務省が18億ドル、日本円にして1900億円相当の武器売却を承認したと述べた。しかし、その5日後には新たに23.7億ドル、日本円で2500億円相当の売却を承認したと発表された。売却されるミサイルの内訳は以下だ
HIMARS(ハイマース)
”High Mobility Artillery Rocket System”の略の「HIMARS」。日本語では”高機動ロケット砲システム”と意味でアメリカ陸軍が開発した装輪式の自走多連装ロケット砲だ。対地攻撃用で主な用途は長距離から敵後方の補給基地や補給線など攻撃をする”阻止攻撃”といわれる戦術で使用する。時速85km/h、輸送機に搭載できる軽量さと機動力に優れている。様々なロケット弾が発射でき、一般的なロケット弾から精密誘導ミサイル、最大射程300kmのMGM-140 ATACMS地対地ミサイル(写真下)が発射できる。台湾と中国を隔てる台湾海峡は180kmの距離なので中国本土を射程に収める。台湾には11基のHIMASと64基のATACMSが売却される予定だ。
SLAM-ER
”Standoff Land Attack Missile”の略の「SLAM」。日本語では”スタンドオフ型対地攻撃ミサイル”を意味し、航空機に搭載可能な空対地ミサイルだ。SLAM-ERは初期のAGM-84E SLAMからアップグレードされたAGM-84H SLAM-ERになる。搭載されたカメラの映像から誘導する画像誘導に、内部センサーによる慣性誘導、GPSなど使って目標を捉える。最大射程は250kmと敵の防空システムの有効射程外から発射されるスタンドオフミサイルだ。135基が売却される予定だ。
HARPOON(ハープーン)
主に艦船や潜水艦に搭載される対艦ミサイル。先ほど紹介したSLAMはハープーンをベースに開発されたものだ。売却されるのはGPS誘導と発射後に標的を変更できるデータリンクを備えたブロックIIになる。飛距離は124kmで主に沿岸警備用と配備される予定で、約400基を購入する。これと合わせて100基の発射システムを購入する。23.7億ドルの契約のほうはこちらが主になる。
MS-110マルチスペクトル航空機偵察ポッド
MS110はミサイルではなく、戦闘機に搭載する高機能な偵察カメラだ。150kmの対地距離で画像情報を取得することができ、台湾海峡の動向を空からいち早く画像で確認できる。これは6基の売却を予定している。
その他、7台のM1152 Alハンヴィー 、11台のM1084戦術貨物トラック、 A217挺のM240B軽機関銃、11挺のM2Al重機関銃、17基の野戦砲戦術データシステム (IFATDS) 、その他、訓練機器、広範囲で多様な通信手段が可能な無線通信機器の売却も予定している。
https://www.dsca.mil/press-media/major-arms-sales/taipei-economic-and-cultural-representative-office-united-states-15
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