ロシアが2014年に一方的に併合したウクライナ南部のクリミア半島。中部のノボフェドロフカ付近にあるロシア軍基地のサキ飛行場で9日、大きな爆発が起きた。燃料貯蔵施設や弾薬貯蔵庫に誘爆するなど、延べ15回の爆発を繰り返し、ここに駐留する航空部隊は大きな被害を被った。現在、クリミア半島の北、ウクライナ南部のへルソンではウクライナ軍が攻勢を強めているが、今回の爆発がへルソン奪還に大いに傾くかもしれない。
黒海艦隊航空隊 第43独立海上攻撃航空連隊が駐留
サキ飛行場をベースにしていたのはロシア海軍黒海艦隊航空隊に所属する第43海上攻撃航空連隊になる。ここに配置されているのは主に戦闘爆撃機のSu-30SMと攻撃機のSu-24といった地上攻撃用の機体だ。ウクライナ侵攻前の2021年にはSu-30SMが25機、Su-24が14機配備されていたというデータがある。さらに輸送機のAn-12が4機、An-26が1機、水陸両用飛行艇のBe-12が3機などが配備されていた。しかし、侵攻開始とともに、同基地にはSu-27戦闘機やMi-8多用途ヘリといった多数の軍用機やヘリが移送されており、戦力は増強されていた。
爆発による被害
How Saki Naval Air Station (Novofedorivka) in Crimea looked before it was struck and what it looks like now. https://t.co/Sx9rN8b0yS pic.twitter.com/kiZFHfHSrz
— Brady Africk (@bradyafr) August 10, 2022
今回の爆発でウクライナ側はロシア軍が9機の戦闘機を失ったと発表している。これだけでもロシア軍の1日の航空機の損失としては最多になるが、損害は更に大きいという見立てが強い。ロシア側の情報筋によれば、Su-27戦闘機8機、Su-30戦闘爆撃機4機、Su-24攻撃機5機、Mi-8ヘリコプター6機、Il-20情報収集機1機が焼け落ちたという情報もある。衛星写真の分析によれば攻撃時、同基地には37機の軍用機と6機のヘリコプターが駐機していたとされている。つまり、約半数の航空機が消失し、ヘリコプターは全滅したことになる。残りの機体もおそらく無事では済まず、飛べる状態ではないだろうし、飛行場事態の運用能力も停止し、復旧には大いに時間がかかる。更にウクライナ大統領顧問のアントン・ゲラシチェンコ氏によれば、基地にいた少なくとも60人が亡くなり、100以上が怪我をしており、その中には多くのパイロットも含まれているとされる。
残る爆発の謎
Footage of the massive strike on Saki airfield in Crimea, more than 200km from the front line. Beach-goers panicking as war returns to the peninsula annexed from Ukraine in 2014. pic.twitter.com/Lh73W2PVOE
— Matthew Luxmoore (@mjluxmoore) August 9, 2022
今回の爆発に関し、ウクライナ政府は攻撃否定。ロシア政府も爆発事故と述べるなど両者ともに攻撃による爆発を否定している。このサキ飛行場は半島の中部に位置している。南部をロシア軍に占領されているウクライナ軍の最前線からでも200kmの距離がある。最近、活躍を見せるHIMASRの誘導弾の射程は90kmになり、到底届く距離ではない、そこで疑われているのがHIMARSで発射可能な射程300kmのATACMSミサイルだが、アメリカはクリミアの攻撃に使用されることを懸念して提供を拒否していたこともあり、提供された可能性は低い。もう一つ噂されているのがオデーサから国産の対艦ミサイル「ネプチューン」発射したということ。射程270kmの同ミサイルなら攻撃は可能だが、せっかく穀物輸出が再開した今、オデーサを攻撃する理由をロシアに与えるはずがないので、これも無いと思われる。そこで、一番可能性が上がっているのが、クリミア半島にいるパルチザンによる攻撃ということ。これはゼレンスキー大統領も言及している。今回、燃料庫や爆薬庫が連続して爆発するなど効果的、最大の被害を与えており、ち密に練られた現地での攻撃の可能性が高いと西側の専門家などは言及している。
一方的なロシアに占領されたクリミアは比較的、親ロシアが多いとされている。しかし、反ロシアの住民もおり、今年7月にはクリミア内で反ロシア運動が広まっているとウクライナ政府が発表していた。
今回のサキ飛行場の爆発はウクライナ軍の士気を高めており、へルソンの奪回に向けた機運が高まっている。ロシア軍側にとっては背後にも敵がいることが分かり、戦々恐々としているかもしれない。
Source
http://fuerzasmilitares.es/russian-air-forces-in-the-crimean-peninsula