ウクライナ軍の新しい総司令官シルスキー氏とは?キーウ防衛、ハルキウ奪還を指揮

ウクライナ軍の新しい総司令官シルスキー氏とは?キーウ防衛、ハルキウ奪還を指揮

ウクライナのゼレンスキー大統領は8日木曜、ヴァレリー・ザルジニー軍総司令官(50)の更迭を発表、後任にシルスキー陸軍司令官(58)を充てる事を明らかにした。新司令官のシルスキー氏とはどういった人物なのだろう。

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反攻作戦が膠着するゼレンスキー大統領は軍総司令官の更迭という手段に踏み切った。ザルジニー軍総司令官は2021年7月にゼレンスキー大統領から軍総司令官に任命され、ロシアによる侵攻後も欧米西側と連携を取りながら、軍の陣頭指揮を執ってきた人物。自ら前線に赴き、兵を鼓舞するなど兵士からの信頼は高いとされている。それは国民においてもであり、最近のデータでは国民の88%がザルジニーを支持しており、これはゼレンスキー氏よりも高い支持率になる。しかし、その支持に反して、昨年6月に始まった反攻作戦は膠着状態にあり、東部戦線では押されつつあるなど、目ぼしい戦果が挙げられていない。それもあってか、ここにきて意見の相違など、ゼレンスキー氏とザルジニー氏との間で確執が生じていると噂されており、今回の解任劇となった。そして、次の軍総司令官として任命されたのが、シルスキー陸軍司令官である。戦争が3年目に突入しようというタイミングに人気のあった司令官が交代というのは現場の兵士、国民にとっては不安かもしれないが、シルスキー氏は司令官を担う上で申し分ない実績を残している。

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キーウ防衛、ハルキウ奪還を指揮

1965年に生まれたシルスキー氏の出生地はソビエト連邦ロシアのヴラジーミル州で、もともとはロシア人だ。1980年にウクライナに移住しており、1986年にモスクワ高等軍事指揮学校を卒業、ソ連軍に入隊し、ソ連が崩壊する1991年まではソ連軍人として軍務に就いていた。その後、ウクライナ国家警備隊を経て、ウクライナ軍に。2015年からはウクライナ東部紛争での戦いの指揮を執っていた。

シルスキー氏はロシアによる侵攻初期の首都キーウ防衛を指揮した人物として知られている。ロシア軍がウクライナ国境に軍を終結していた頃、多くの人がロシアが実際に侵攻してくることは無いと思っていたが、シルスキー氏は違い、侵攻の危機を感じ、首都防衛網を構築。ロシア軍を押し寄せた際は防衛部隊を指揮し、キーウ侵攻を阻止している。ゼレンスキー大統領はその功績を称え、同国最高の栄誉であるウクライナ英雄賞をシルスキー氏に与えている。

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シルスキー氏は2022年9月に行われたウクライナ北部のハルキウ奪還作戦も指揮。奇襲を仕掛け、わずか数日で30以上の集落を解放するなどしてハルキウ州のほとんどの奪還に成功し、ロシア軍は撤退した。この時の戦いは戦史に残る突破、包囲戦術と言われている。その後は東部の激戦地となったバフムートの戦いを指揮。バフムートは最終的にロシアの手に落ちたが、ここに強硬な防衛陣地を築き、ロシア軍を釘付けにし、戦力を消耗させ、ロシア軍が他の戦線で大きな攻勢に出る能力を奪ったと評価されている。ただ、バフムートでの評価は二分しており、ここは戦略的価値が低く、劣勢になった時点で撤退すべきだったが、無駄に戦いを長引かせたことで、ウクライナ軍の被害を拡大させたという評価もある。

シルスキー氏は実戦において防衛戦、攻撃戦両面で確かな実績を残しており、実績的には申し分なく、現場の指揮権移譲は問題なく行われると思われ、戦略的な混乱はないと推測されている。しかし、人気のあったザルジニーを交代させる事については国民の結束が揺らぐなど否定的な意見は少なくない。この交代劇で戦況に変化はみられるだろうか。ロシア・ウクライナ戦争は間もなく3年目に突入する。

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