イラン、ロシアに弾道ミサイル提供か?攻撃に使われればウクライナは国交断絶

アメリカのブリンケン国務長官はロシアがイランから弾道ミサイルを受け取ったと発言、イランに対し、新たに制裁を科すと発表した。ウクライナはミサイルがウクライナ攻撃に使用されれば、イランと国交を断絶すると発表している。

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ブリンケン国務長官は10日火曜、ロシアがイランから新たな弾道ミサイルを受け取ったと発言した。「ロシアは弾道ミサイルを既に受け取っており、数週間以内にウクライナ人に対して使用する可能性が高い」と述べた。この情報は米国によって初めて確認され、イランとロシアは2023年12月に数百発のミサイルを供給する契約を締結したと報告している。今年5月から8月にかけて、カスピ海にあるロシアのオリャ港とイランのアミラバード港の間を何度も輸送船が往復しているのが確認されている。イランとロシアはカスピ海を挟んだ隣国であり、内海のカスピ海の通商を西側が規制する事は難しい。米国とEU各国は、イランによるロシアへの新たな兵器供給を受けてイランに追加の制裁を科す方向だ。

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イランは否定

しかし、イランはウクライナで使用する武器をロシアに提供したことを否定している。「イランは、紛争当事者への軍事支援は人的被害の増加、インフラの破壊、停戦交渉からの遠ざけにつながるものであり、非人道的であると考えている。したがって、イランは自らそのような行動を控えるだけでなく、紛争に関与する側への武器の供給を停止するよう他国に呼びかけている。」とイランの国連代表部は最近声明で述べている。しかし、これは詭弁だ。例えばイランがロシアに自爆ドローン「Shahed-136」を供与した事は周知の事実であり、その後、ライセンスを与え、現在はロシア国内で量産化されている。イランはむしろ世界各国の紛争を煽っており、イスラム過激派に兵器を供給し続けている。イエメンではフーシ派に、パレスチナではハマスに、レバノンではヒズボラに、シリアではアサド政権に武器を供与、中東各地で起きている地域紛争の首謀者である。

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提供したのはFath360短距離弾道ミサイルか?

ロシアに提供されたされるミサイルはFath360(BM-120)短距離戦術弾道ミサイルとされ、ウクライナは200発以上のFath360がカスピ海のロシアの港に送られたと主張している。ロイター通信は今年8月、ロシア軍兵士がイランを訪問し、Fath360の訓練を行っていると報道している。

Fath360は2022年4月に発表された比較的新しい兵器だ。ミサイル自体は小型で、民間用トラックの荷台に最大六連装のランチャーが搭載できることが確認されている。誘導方法はロシアのGLONASS衛星衛星測位システムを使ったGNSS誘導。二次誘導として慣性誘導(INS)も使用する。飛翔速度は最大マッハ4と迎撃は簡単ではない。

ただ、飛距離は短く、最大120kmとされている。アメリカからウクライナに供与されているHIMARSから発射可能な短距離弾道ミサイルATACMSの飛距離が最大300km、ロシア軍の短距離弾道ミサイル9K720イスカンデルMの飛距離が400kmなので、Fath360が弾道ミサイルとしては射程が大分短い事が分かる。ウクライナ軍のHIMARSで使用されるロケット弾GLSDBでも射程150kmなので、それよりも短く、運用にはリスクが伴う。それがイランがロシアに供与した理由だろう。

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イランは現在、イスラエルと緊張状態にある。今年7月31日、パレスチナのイスラム組織ハマスの最高指導者ハニヤ氏が、イラン新大統領宣誓式のため首都テヘランに滞在中、イスラエルに暗殺されたことに対する報復の懸念が高まっている。そのような状況下でロシアにミサイルを供与する余裕はない筈だ。しかし、イランとイスラエルの間の距離は、約1800km。必要なのは2000km以上飛行可能な長距離ミサイルであり、イスラエルへの攻撃にFath360の出番はない。イスラエルの隣、レバノンやシリア、パレスチナの武装組織に供与しようにも、ルートは海上輸送が主で現在、海上は監視の目が厳しく、押収される懸念がある。実際、フーシ派の武器輸送はこれまで何度も西側の艦船に見つかり、押収されている。その点、ロシアはカスピ海経由で輸送でき、西側の邪魔も入らない。

とはいえ、射程が短くとも100km以上先を精密攻撃できるミサイル数百発がロシアに供与されたのはウクライナにとっては大きな脅威だ。

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