
イタリアは地中海の敵潜水艦に対抗するため、新たな対潜哨戒機の導入を検討しており、その有力候補に防衛省技術研究本部と川崎重工業が開発し、川崎重工業が製造、海上自衛隊が採用するP-1哨戒機が上がっている。イタリアはこれまで伝統的に国産で賄えないものは米国製を頼ってきたが、P-1を採用することになれば、それを崩し、次世代戦闘機開発で協力する日本との関係を強化することになり、新たな「日伊同盟」と言われている。
ディフェンスニュースの報道によれば、地中海の敵に対抗するために新たな対潜哨戒機を探しているイタリア空軍のルカ・ゴレッティ司令官は3月28日金曜、記者団の「海上哨戒能力のギャップをどう埋めるのか?」という質問に対し、「P-1は、利用可能な選択肢の一つだ」と答え、「我々は日本と素晴らしい関係を築いている」と付け加えた。
イタリア上院外交委員会の公聴会で、ルカ・ゴレッティ司令官は、P-1がイタリアの海上哨戒能力を強化するための実行可能な選択肢であると認めている。ゴレッティ司令官は、イタリアと日本、英国が参加する「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」といいた共同防衛イニシアチブを通じて強化されたイタリアと日本の強力な二国間関係を強調、GCAPパートナーシップがイタリアと日本の防衛産業間のさらなる協力への道を開いたと強調しており、P-1を調達する意義を唱えている。
対潜能力を欠く、イタリア空軍の哨戒機72ASW

イタリア空軍はフランスのブレゲー社によって1960年代に開発された対潜哨戒機「ブレゲー アトランティック」を配備していたが2017年に全機退役。後継としてエアバス社とイタリアの軍事企業レオナルド社がターボプロップ双発旅客機のATR72をベースに共同で開発製造した4機のATR 72ASW(P-72)を導入し、空軍と海軍の混成乗組員で運用している。タレス社製のAMASCOS(空中海上状況制御システム)監視システムと電子戦および偵察システム、軽量航空魚雷が搭載されているものの、対潜水艦戦能力を欠いていると言われており、地中海ではロシア海軍の潜水艦の活動が活発化する中、対潜に強い哨戒機の調達が急務になっている。その候補が日本のP-1哨戒機だ。
P-1哨戒機

P-1哨戒機は防衛省技術研究本部と川崎重工業が開発し、川崎重工業が製造するターボファンエンジン4発の対潜哨戒機で機体、エンジン、任務システムの全てを新規開発した純国産機になる。2000年代に開発が始まり、2013年から海上自衛隊に配備、現在、34機が配備運用されている。全長30、翼幅35.4m、高さ12.1m、基本離陸重量79,700kg、最大速度は996km/h、巡航速度833km/h、航続距離は8,000km。武装には空対艦ミサイル、短魚雷、対潜爆雷を搭載する。HPS-106 AESAレーダーを搭載し、海上・水上目標の探知能力が向上しており、機体後部に搭載されたMAD(磁気探知装置)は潜水艦の金属船体が生み出す磁場の変化を検知、ESM(電子支援装置)は敵のレーダー波や通信を傍受し、潜水艦の位置を推定し、多数のソノブイを水中に投下して敵潜水艦の音響情報を収集する。その対潜能力は多国間共同演習の対潜競技会で優勝するなど世界で認められている。
イタリアはこれまで-767空中給油機、C-130輸送機、ガルフストリーム G550早期警戒機、F-35戦闘機、MQ-9リーパー無人機など自国で賄えない機体は米国製を採用してきた。イギリスやドイツが米国のP-8対潜哨戒機を採用したようにイタリアもP-8を採用する流れになると思われていた。P-1をもし採用すれば、昨今の米国と欧州の関係悪化、そして、日本とイタリアの関係強化を表すことになる。日本とイタリアはイギリスと共に次世代戦闘機の共同開発「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」を進めており、空の分野で関係が深まっており、GCAP以外の分野での協力も議論されている。その一つが航空自衛隊の次期練習機開発だ。航空自衛隊は40年使用されている国産のT-4練習機の後継機を探しており、イタリアはレオナルド社が開発製造するM-346高等練習機の売り込みをかけている。2023年にはパイロットがイタリアに派遣されて訓練を受けており、M-346とのトレードオフでP-1をイタリアが採用するという話もある。ただ、アメリカのボーイング社がT-7高等練習機の売込みをかけている。日本は共同開発を前提にしているが、米国との関係もありボーイング社が優勢との報道もある。
防衛装備品であるP-1哨戒機は輸出が可能で日本はこれまで海外に売り込みをかけているが、C-2輸送機、US-2救難飛行艇と同様、まだ売れていない。