最近のスマートフォンはロック解除に指紋認証に顔認証などが使用されるなど、各個人が持っている身体的特徴を使った生体認証が一般的になっている。生体認証は犯罪や詐欺を防ぎ、個人情報の盗難に対抗する方法として効果的だ。より強固な方法として多くの生体認証技術が研究され実用化されているが、現在、主流なもの、これから主流になるであろう8つの生体認証を紹介する。
指紋認証
生体認証の方法として一番歴史があり、一般的なのが指紋だ。1600年代後半から研究が始まり、1880年には人の指紋は人によって異なる「万人不同」になり、成長する過程で変化することのない「終生不変」になることが発表される。1901年にはイギリス警察がこの指紋の特性を活かして個人を識別する捜査方法として指紋鑑定を導入する。それから世界中に広まり、1908年には日本の警察にも導入される。今でも一般的な捜査方法になり、証拠としても採用される。近年ではスマートフォンのロック解除などに指紋認証が使われるなど生活の中にも浸透している。しかし、指紋は偽造できたり、消したりすることができる。老いると経年によって変化してしまう。
網膜(虹彩)認証
網膜認証のアイディアは1935年に上がったが、当時の技術では難しく、実現したのは1975年になってからになる。肉眼での確認は難しいが網膜には無数の毛細血管がはしっている。この毛細血管のパターンは人によって異なり、指紋同様、成長する過程で変化することもない。ただし、網膜をスキャンするための専用スキャナは高価で認証も手間になる。緑内障、白内障、マラリアなどの疾患、妊娠によって変わる可能性があり、一般的な手法には至っていない。
静脈認証
静脈認証は手の平や指の内部にある静脈のパターンを認証する方法になる。静脈パターンは近赤外線で撮影する。体内にあるため他人に知られることは無いので偽造やなりすましはできなく、経年による変化もない。なぜ動脈ではないかというと静脈の方が皮膚に近いので読み取りやすいからになる。ATMの認証などにも使われている。
顔認証
顔画像から骨格や目、鼻、口などの顔のパーツの位置など特徴となる部分を抽出して個人を識別する。多くの顔データを登録、アルゴリズム化し、特徴と標準データの差分で認証する。指紋や網膜、静脈のように専用機器にかざさなくとも、カメラ映像から特定することでき、マスクやサングラス、横向きの顔でも特定するすることができ、経年変化にも対応する技術もある。網膜、静脈といった個々人のセキュリティ認証というよりは、監視システムなど用いられることが多いが、スマートフォンのロック解除にも導入されている。
歩行認証
自分では気づかないと思うが人の歩行にはスピード、歩幅、腕の振り、姿勢、動きの左右非対称性など個性がある。歩行は習慣づいたものであり、それを変えることは難しい。これらの歩行姿勢を項目化して性別と年齢など加味して、対象となる人物の過去の歩行データと照らし合わせて照合する。監視カメラの顔認証が不十分だったり、顔を撮影できなかった場合に歩行認証を使う。
心拍(鼓動)認証
心拍パターンは指紋よりもユニーク(唯一無二)とされている。意図的に変えること偽ることも不可能だ。計測もスマートウォッチなどのウェラブルデバイスで簡単にトラッキングでき、ブルートゥースやNFCで容易にデータを飛ばすことができるのでウォークスルーで認証できる。米軍ではレーザースキャンを使って200m離れたところから個人を特定する技術の研究を行っている。しかし、心拍数は健康状態や体への不測の事態で変化することがあり、絶対とは言えない。
体臭認証
他人の匂いを嗅いでみると気づくと思うが、人はそれぞれ固有の体臭を持っている。その臭いを警察犬が辿って犯人を追いかけるシーンはよく見ると思うが、課題はそれをどうデジタル化することだった。マドリッド工科大学は、スペインの技術コンサルティング会社であるイリアシステマスと協力して、化学物質の匂いをパターン化して、パターンに基づいて個人を識別する技術を開発した。まだ研究段階ではあるが体臭の認識率は85%を越えている。
脳波認証
脳波には個人毎に特性があって、人それぞれが異なるユニークな脳波を持っている。脳波はバイオセンサーのヘッドセットで取得することができる。また、静脈や心拍などと同様に体内にあり、データの取得、偽造、故意に変える事も難しい。国内でも研究は行われており、金沢工業大学の研究グループでは98%の認証精度を実現している。