アメリカの軍事企業レイセオン社が開発する小型無人機「Coyote(コヨーテ)」は諜報、偵察、監視といった軍事ドローンの一般的な任務の他に敵のドローンを撃墜するC-UAS(カウンタードローン)としての役割をこなすこともできるマルチ無人機になります。
Coyoteとは
コヨーテは米海軍研究局との契約もと2000年代にAdvancedCeramic Research社によって開発が始まった無人機で、2007年に初飛行しています。同社はその後、Sensintelに買収され、2015年にはSensintelをレイセオン社が買収、現在は同社によって開発製造されています。
コヨーテの特徴はチューブ型発射機のランチャーからミサイルのように打ち上げられる点です。この チューブ型発射機によって水上、地上、空中といった様々なプラットフォームからドローンの展開が可能になります。単機での行動はもちろん、複数のランチャーを搭載、ドローンを同時射出して、群れとして運用することもできます。2016年には20機のコヨーテによる、相互リンク、自律型ネットワークによる飛行を実現しています。モジュラー設計により、ISR( 諜報、偵察、監視 )の他に電子戦、ストライキ、UAS対策、境界セキュリティ、調査、災害評価、ターゲティング支援といったミッション要件に応じて機能パーツの換装が可能です。
ドローンの大きさは翼幅1.5m、重量5.9kg。飛行時間は最大2時間で通信範囲距離は130km、飛行高度は9,100m、巡航速度は102km/hになります。ドローンは消耗品として運用できるほど低コストですが、パラシュートによって回収、再利用もできます。
C-UASとしてのコヨーテ
米陸軍はコヨーテを無人機・ドローンを撃墜するためのC-UAS(カウンタードローン)機として”Coyote Block2”を開発。これまで監視、偵察がメインだったコヨーテに高度なシーカーと弾頭を搭載。RPS-42 Sバンドレーダー、モディ電子戦システム、視覚センサーを搭載した地上システムと連携して敵対なドローンを検出、追跡します。さらにバッテリー駆動の2枚ばねのプロペラから小型のジェットタービンエンジンに切り替えられ、推進力が大幅に増加。速度は前モデルの4倍とされています。弾頭は近接信管になり、敵ドローンの近くで爆発、ドローンを無力化します。弾頭は炸裂弾になり、広範囲に影響を及ぼすため、1機でドローンの群れにも対応できます。また、二次被害を防ぐために爆発させずにドローンに体当たりさせることも可能です。将来的には”ドッグファイト”に近い戦い方もできる機能が搭載されるようです。
2020年からCoyote Block2のフルレート生産が開始され、米国政府により、同盟国向けの対外輸出承認を既に受けており、日本も購入することが可能です。
再利用可能なブロック3
更に一番新しいブロック3には弾頭ではなく、電子機器を無効化する電磁波攻撃機能が備わっているとされています。2021年の7月の実験では1機のCoyoteが10機のドローンの群れを無効化。しかし、ブロック2のように自爆するのではなく、Coyoteはその後、回収されており、再利用が可能です。ブロック3の詳細な機能は不明ですが、マイクロ波のような指向性エネルギー兵器が搭載されているものと思われます。
これまで、米軍をはじめとした正規軍は数千ドルのドローンを撃墜するのに、数万ドルの対空システムを使用、若しくは数千万ドルの戦闘機を飛ばし、数百万ドルの対空ミサイルを使って撃墜していました。危機を排除するのに背に腹は代えられませんが、非常に費用対効果が悪い方法です。コヨーテのコストは明らかにされていませんが、今後、費用対効果の高いC-UASとして期待されています。
Source
https://www.raytheonmissilesanddefense.com/capabilities/products/coyote