ワシントンの米国戦略国際問題研究所(CSIS)は中国による台湾侵攻のシミュレーションゲームを開発し、シミュレーションの結果、ほとんどのシナリオで台湾・日本・米国の連合国が勝利するという報告を発表しました。しかし、その結果、日本は100機以上の航空機と26隻以上の艦船を失う可能性があり、日本領土が攻撃受ける可能性についても言及しています。
CSISは複数の米軍の元幹部、軍事専門家参加のもと2026年に中国人民解放軍が台湾に侵攻、それを台湾軍が迎え撃ち、日本の自衛隊、米軍が支援・参戦することも想定した様々なシナリオに沿って実に24回に及ぶシミュレーション、いわゆる机上演習を行いました。その結果、中国軍が南部や一部を制圧することはあっても、米軍の反撃で補給は絶たれ、首都台北を制圧するには至らず、ほとんどのシナリオで日本・米国の支援を受けた台湾軍が勝利、台湾の自治は保たれる報告書を発表しました。
中国軍は上陸の主力部隊である水陸両用部隊が壊滅、海軍は混乱に陥り、結果、約10,000人の兵士が死亡し、155機の航空機と138隻の主要艦艇を失い、更に数万人の兵士が捕虜となると推定しています。しかし、台湾、日本、米国は勝利するものの、相当の代償を被るとも分析。世界最強の米海軍は空母2隻、10から20隻の大型艦、160~370機の航空機を失い、アメリカ太平洋艦隊の第3艦隊と第7艦隊は壊滅的な打撃を受けます。約3,200人の兵士が3週間の戦闘で戦死すると推定、これはイラクとアフガニスタンでの20年間の戦闘での戦死者の半分を占める数です。米国は勝利しても長期的には”敗北した”中国よりも苦しむことになるかもしれないと報告書は述べています。
台湾は陸軍が約3,500人の死傷者を出し、海軍は26隻ある駆逐艦とフリゲート艦すべてが沈没すると報告書は述べています。軍は崩壊しないまでも、本土は中国の攻撃によって荒廃、インフラの復旧など復興が優先され、軍の立て直しは容易でありません。
日本は米軍を支援、及び自国領土内の基地から米軍が反撃(出撃)することを許可しなければならず、その結果、本土の在日米軍基地や自衛隊基地も中国軍によって攻撃受け、120機の航空機と26隻以上の艦船を失う可能性があります。日本が中立の立場で台湾を支援せず、米軍の基地使用も認めなければ攻撃されることはありませんが、その場合、台湾は敗北します。また、米国の支援なく、台湾単独での防衛では3カ月で首都台北が制圧されると分析しています。
報告書では台湾が高価な艦船や航空機に軍事予算を投入しているが、これらは真っ先に標的になる可能性があり、これよりも防衛のための単純な武器を揃えるべきだとも言及しています。島である台湾は侵攻前に中国軍がシーレーンを封鎖することは目に見えており、ウクライナのように陸続きではないため、いざ、開戦すれば、軍事物資を届けることは難しくなります。侵攻の前までに十分な軍事物資を揃えている必要があります。
Source
The First Battle of the Next War: Wargaming a Chinese Invasion of Taiwan