イスラエルはOKだが、ウクライナはNO!ミサイルの撃墜支援

ウクライナのゼレンスキー大統領は西側諸国にウクライナ領空を襲うロシア軍のミサイルや無人機を撃墜する支援を要請したが、アメリカやドイツはこれを受け入れなかった。最近、イスラエルがイランによるミサイル、無人機攻撃を受けた際、アメリカは支援としてイスラエル上空でそれを撃墜したが、ウクライナには適用されなかった。

sponser

ゼレンスキー大統領は、今月18日にロンドンで開催された第4回欧州政治共同体会議で、西側諸国に対し、今年4月にイスラエルがイランやフーシ派のミサイルや無人機攻撃を受けた際に、イスラエル上空で撃墜を支援したのと同じように、ウクライナ領空でロシアのミサイルや無人機を撃墜するよう呼び掛けた。この提案を検討しているのがウクライナの隣国ポーランドだ。

sponser

過去にロシアのミサイルが領空を侵犯

ポーランドは今月、ウクライナと両国間の共同防衛協定に調印。その中にはポーランド領空近くに向かってくるロシアのミサイルをウクライナ領空内にある間に撃墜するというウクライナからの提案が盛り込まれており、ポーランド側は具体的にミサイル撃墜を検討している。ウクライナと国境を接するポーランドはロシアのミサイルの脅威を目のあたりにしている。昨年12月29日にはロシアのサンクトペテルブルク周辺からウクライナに向けて放たれたミサイルがベラルーシ上空を超え、ポーランド領空に40秒間侵入、その後、ウクライナに向けて進路を変えた。侵入時間が短かかったこと、ミサイルがポーランドを攻撃する意図があるものではないこと、そして、撃墜すると残骸が自国に降り注ぎ、国民と財産にとって脅威となるジレンマがあり、撃墜に至らなかったとポーランドのラドスワフ・シコルスキ外相は述べている。このような状況に対し、ウクライナ側はポーランド領土に侵入する差し迫った危険があるときに、国境を越えて我々の領空を越えて撃墜しても構わないと述べている。ポーランド国境に近い都市リビィウは西側から軍事支援の集積・中継地と言う事もあり、度々、ロシアの攻撃対象になっており、ポーランドの国境近くにはミサイルや無人機が何度か着弾している。2022年11月には国境付近でロシアのミサイルを迎撃しようとしたウクライナの防空ミサイルがポーランド内に着弾して2人が死亡するという事故も起きている。ポーランドはウクライナの国境地帯にパトリオットミサイルを配置しており、ウクライナ側の提案を受け入れる準備は整っている。

アメリカとドイツは拒否

ただ、アメリカのホワイトハウス国家安全保障広報担当補佐官ジョン・カービー氏は、バイデン政権はポーランドがウクライナ領空でロシアのミサイルを撃墜し、紛争が激化することを望んでいないと述べ、反対する姿勢を表明した。NATO事務総長のイェンス・ストルテンベルグは15日、NATOはウクライナとロシアの戦争に直接関与せず、間接的支援に限定されると繰り返した。また、ドイツのショルツ首相はゼレンスキー氏の支援要請に対し、ドイツメディアに「そのような(ポーランドとウクライナの)合意があることは理解しているが、そのような措置は不可能だ」と述べ、ボリス・ピストリウス国防相は、ウクライナ領空でロシアのミサイルや無人機を撃墜することは戦争に直接関与する事になり、真剣に議論していないと述べている。ドイツはウクライナへの追加のパトリオットミサイルの供与を表明している。

イスラエルとの矛盾

ウクライナの要請を拒否したアメリカだが、今年4月にイランによって行われたイスラエルへの大規模なミサイル・無人機攻撃に対し、戦闘機を出撃させ、イスラエル領空、領空外で80機以上を撃墜する支援を行っている。これはアメリカが言う、イスラエルとイランとの紛争に直接関与する行為だ。アメリカとイスラエルは同盟関係にあると言われており、米国とイスラエルとの間では戦略的な同盟関係を強化するために2013年に「米国とイスラエルの戦略的パートナーシップ法」の法案が可決されている。しかし、これには米国はイスラエルの防衛の義務を負っていない。アメリカのイスラエルの支援、立場はしばしば「二重基準(ダブル・スタンダード)」と世界から批判されている。撃墜支援にはイギリスも参加している。

アメリカとウクライナは2024年6月に「二国間安全保障協定」を締結している。これは今後10年にわたり、ウクライナ軍への訓練、軍事支援の継続、兵器生産の支援と情報共有の拡大を約束しているが防衛義務を負うものではない。

sponser
sponser
イスラエルはOKだが、ウクライナはNO!ミサイルの撃墜支援
フォローして最新情報をチェックしよう!