戦場に無人航空機(UAV)・ドローンが投入されて久しい。当初は偵察といった情報収集、大型のUAVであればミサイルを搭載して空爆といった用途に用いられていたが、最近ではドローンそのものを弾頭として使用して、敵に体当たりさせる戦術が用いられることが多くなっている。その戦法から旧日本軍の「神風特攻隊」に倣って”カミカゼドローン”と呼ばれている。
神風とは
神風とは神の力によって吹き荒れる強い風のことを指す。神風の出来事といえば1200年代の元軍による二度の元寇の時に暴風雨が吹き荒れ、元軍を壊滅させたのが有名な話だ。ただ、神風という言葉を世界的に有名にしたのは旧日本軍が大戦に行った爆弾を積んだ航空機ごと標的にぶつける戦法「特攻」を行うために結成された特別攻撃隊「神風特攻隊」だ。元寇の時の神風のように敵を撃退する思いが込められて名付けられたが、海外ではそのような意味では捉えられておらず、自らを犠牲にする”特攻”という戦法を象徴する単語として”カミカゼ”が使われている。
カミカゼドローンとは
搭載するミサイルをターゲットに向けて発射する米軍のMQ-9リーパーといった攻撃ドローンとは異なり、カミカゼドローンはドローン自体が爆薬を積んだ弾頭であり、ドローンごと標的に向かって飛んで体当たりして、破壊する。神風特攻隊と違い搭乗員こそ乗っていないが、機体を犠牲にして敵を撃破することから”カミカゼドローン”、または”キラードローン”とも呼ばれている。
ミサイルより安価に誘導攻撃できる
アゼルバイジャン軍のカミカゼドローンがアルメニア軍の戦車に衝突するまでのドローンのカメラ映像pic.twitter.com/RrkpqwdVUB
— ミリレポ (@sabatech_pr) October 2, 2020
これまで誘導兵器というとヘルファイアやジャベリンといった赤外線などを使うミサイルが主だった。これらは精密誘導で高い確率で標的を仕留めることができるが、高価で途上国の軍隊ではそう多くは購入できない。発射する際は搭載する車両や航空機が必要だったり、運用する兵士を危険に晒すことにもなる。
その点、ドローンはコストが安く、民間用のドローンでも爆弾を搭載するだけで簡単にカミカゼドローンに早変わりする。遠隔操作の技術も向上し、数十km遠く離れた場所からでも操作でき、兵士への危険のリスクが少ない。ドローンから送られてくるカメラの映像を見ながら衝突ギリギリまで目視で遠隔操作ができる。ミサイルは空中に放ったら一直線に標的に向かうしかないが、ドローンは空中で数十分浮遊しながら標的を見極めてから攻撃することができ、偵察の任務も兼務することできる。
カミカゼドローン兵器
KUB-BLA
ロシアのカラシニコフKUB-BLAドローンには画像認識機能が付いており、予め登録された画像の標的を認識すると自動的に標的に向かって最高時速130 kmで特攻する。
Kargu-2
トルコのSTM社のKargu-2はより小型で、顔認識機能が搭載されており、より特定の標的をピンポイントで狙い撃ちできる。小型で一機当たりの破壊力は大きくないが、ドローン間をネットワークで連携することで群れで行動することができるので波状攻撃といったことも可能。
これらは遠隔操作しなくとも予め座標と標的を登録しておけば、自律飛行で標的を仕留めることができる。
ロシア、中国、トルコ、イスラエルはカミカゼドローンの開発を急速に進めている。既に戦場で戦果を上げており、対空能力の弱い戦車や装甲車がカミカゼドローンの餌食になっている。