米国防総省は28日、長距離巡航ミサイルJASSM-ER (Joint Air-to-Surface Standoff Missiles-Extended Range) と関連装備の日本への売却を承認したと発表した。売却額は最大1億400万ドル規模、日本円で152億円と推定される。
日本政府は、AGM-158B/B-2 射程延長型統合空対地スタンドオフミサイル(JASSM-ER)を最大50基の購入をアメリカに要請していた。これらにはJASSM アンチジャム全地球測位システム受信機 (JAGR)、訓練用ミサイル、ミサイル コンテナ、弾薬支援および支援機器、スペアパーツ、消耗品、付属品、修理/返品サポート、統合とテストのサポートと機器、人材の訓練と設備、機密および非機密のソフトウェア、出版物および技術文書の配信とサポート、輸送サポート、米国政府および請負業者のエンジニアリング、技術、物流サポート サービス、研究と調査、およびロジスティクスおよびプログラムサポートのなどが含まれる。
今回の売却の承認は、インド太平洋地域の政治的安定と経済発展のため、主要同盟国の安全を改善することにより、米国の外交政策目標と国家安全保障目標を支援することになると米国務省は述べており、地域の基本的な軍事バランスを変えるものではないと言及しているが、対中国を睨んだものであることは明らかだろう。
JASSM-ERとは
統合空対地スタンドオフミサイルを意味するJoint Air-to-Surface Standoff Missilesの頭文字をとった「JASSM」ことAGM-158はロッキード・マーティン社が開発したステルス型の長距離空対地ミサイル。売却が承認されたJASSM-ER(AGM-158B)はExtended Range(射程延長型)になる。450kgの巨大な装甲貫通弾頭を搭載。射程は標準型で370kmだが、射程延長型のJASSM-ERは900km以上とスタンドオフ攻撃が可能な長距離巡航ミサイルで母機を敵の防空網に侵入させることなく攻撃ができる。また、今回、エクストリームレンジ型(JASSM-XR)と言われるAGM-158B-2の売却も承認されている。B-2の弾頭は910kgと倍になっており、射程は1,900km拡大されている
投下されると翼を展開し、巡航速度900km/hの亜音速で飛行。レーダー断面積が少ないステルス性を備えたボディで敵レーダーを掻い潜り、目標に接近する。GPSで誘導されると終末誘導は赤外線シーカー、画像認識システムによって標的を識別して攻撃を行う。慣性誘導システムもあるのでGPS妨害にあっても目標まで飛行できる。またデータリンク機能によりオペレーターが途中で軌道修正したり、目標を変えることも可能だ。ミサイルは非常に正確で平均誤差半径は僅か3mだ。価格は一発当たりAGM-158Bが104万ドル、日本円で約1.5億円。AGM-158B-2が150万ドル、日本円で2.2億円。
JASSM-ERが搭載可能な機体はB-1ランサー、B-2スピリッツの両戦略爆撃機。さらにF-35、F-16、F-15E、F/A-18E/Fの戦闘機にも搭載できる。航空自衛隊では今のところF-15J戦闘機への搭載が予定されている。将来的にはF-35A/Bにも搭載されるかもしれない。
輸送機にも搭載できるRapid Dragonシステム
また、JASSM-ERには弾薬パレット化した”Rapid Dragon”というシステムがあり、これにより、輸送機にもこの巡航ミサイルが搭載が可能になっている。このシステムの場合、輸送機は空中からの物資投下の要領でパレットに収納されたJASSM-ERを投下。その後、パレットは分解し、ミサイルが放出される。これにより、本来、攻撃能力を持っていない輸送機も爆撃機に換装することが可能になる。スタンドオフミサイルなので防空能力がない輸送機でも可能な戦法になる。アメリカ空軍のC-130輸送機であれば6発、C-17輸送機であれば9発ものJASSM-ERが搭載でき、搭載量が多い、輸送機の強みが活かせる。JASSM-ERの売却が承認されたことで日本でも今後、C-2輸送機に”Rapid Dragon”の搭載が期待される。
Photo AFResearchLab米空軍とロッキード・マーティン社が開発を進める「Rapid Dragon(ラピッド・ドラゴン)」は輸送機の空中投下プラットフォームから投下・発射可能な弾薬兵器システムになり、本来、攻撃機能を持[…]
JASSMを配備している国は現在、アメリカ、オーストラリア、フィンランド、ポーランド、モロッコの5カ国だけだがドイツ、オランダも配備を予定、日本は8カ国目の配備になる予定だ。売却時期などは何も明示されていない。
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