ポーランド外務省は15日、ウクライナとの国境から5kmに位置する東部プシェボドゥフ (Przewodow)に同日午後3時40分、ロシア製ミサイル1発が着弾し、2人が死亡したことを確認したと発表しました。今回のロシアによるウクライナ侵攻で初めてNATO加盟国内で犠牲者が出たことになります。
ポーランドとの国境に近いウクライナ側にはNATOからの支援物資の集積、中継地として兵站の重要拠点、訓練施設などもある都市リビウがあり、3月頃から度々ロシアの巡航ミサイルによる攻撃を受けていました。3月13日にはポーランド国境から25km離れたウクライナ最大の訓練施設が攻撃され数十人が死亡しています。国境に近い場所に着弾していたこともあり、ポーランドは兼ねてから、自国領内に着弾するのでは防空ミサイルを設置するなど警戒していました。そして、今回、その懸念が現実のものとなってしまいました。
ロシア国防省は攻撃を否定、状況を悪化させるための意図的な挑発とNATOを参戦させるためのウクライナ側の偽旗とも言っています。
奇しくも15日にはロシアがウクライナ全土に100発のミサイル攻撃を行っていました。リビウ周辺も攻撃目標に入っており、それらが目標を逸れてポーランド側に着弾した可能性はあります。NATOが参戦して困るのはロシア側なので意図した攻撃は可能性は低いと思われますが、もともと、ロシアの長距離ミサイルの精度は兼ねてから低いと言われていました。半分以上がソ連時代に製造された古いミサイルで、更に経済制裁で半導体など高度な電子部品が手に入らない現在、新たに製造されるミサイルの精度は低下しているとされています。
2つの可能性
Photo 1: Wreckage in Poland;
— ТРУХА⚡️English (@TpyxaNews) November 15, 2022
Photo 2: October 31, Kyiv region, wreckage of Kh-101 pic.twitter.com/1u17Ymo2UY
ロシア側のミサイルという報道が大勢を占めていますが、それを迎撃するためのウクライナ側の防空ミサイルが迷走して着弾したという報道もあります。それもない話ではありません。
これらはミサイルの破片を調べれば分かることで既にポーランドの調査チームが現地に入って調べていますが、ネット上には既にミサイルの破片というものが投稿されており、考察が進んでいます。
Kh-101
その一つがロシアのKh-101巡航ミサイルです。これは2012年に運用が始まったミサイルで、ウクライナへの攻撃に度々使用されています。航空機から発射される空中発射型で射程は3000kmほど、最大5000kmという情報もあります。核弾頭の搭載も可能です。高度30~60mの地上すれすれの低高度を飛行し、レーダー探知を回避することからいわゆるステルスミサイルと言われています。
S-300
そして、もう一つが防空システムS-300のミサイルです。その名の通り、航空機やミサイルを迎撃するための防空ミサイルシステムになり、この場合、ウクライナ側の防空システムの可能性が高くなります。ロシア側もミサイルが不足するなかS-300のミサイルを地上攻撃に用いていますが、S-300の最大射程は300km、地上からしか発射できず、これをロシア領内から攻撃する射程不足です。しかし、ベラルーシからであれば届く距離で、ベラルーシとウクライナとの国境付近にはロシア軍が展開、ベラルーシからもミサイル攻撃が行われています。
mod russiaロシア軍は侵攻開始からこれまで2000発以上のミサイルをウクライナに撃ち込みましたが、巡航ミサイルはほぼ撃ち尽くしたとされ、経済制裁で半導体の入手も厳しいため生産が追い付いていません。弾道ミサイルも枯渇しつつあ[…]
どちらにせよロシア側の攻撃を発端としたものであり、ロシア側はこれ以上NATOを刺激するわけには行かないので、ポーランド国境付近への攻撃を自制することになるかもしれません。どちらのミサイルにせよ、ポーランド、NATOも難しいかじ取りを迫られます。