山岳戦のスペシャリスト”山岳部隊”とは

山岳戦のスペシャリスト”山岳部隊”とは
Photo by us army

山は平地とは全く違う環境であり、急こう配、生い茂る木々とブッシュがあるかと思えば岩だらけの斜面と標高によって変わる自然環境、変わりやすい天気、濃霧、寒さに寒暖差。日頃から訓練やサバイバルの知識を持っていないと、体力を消耗し事故や遭難に合う危険性があります。これは戦いにおいても同様で屈強な兵士でも日頃から山岳戦での準備を行っていないと、山の自然は一番やっかいな敵となりえます。そこで、国内に山岳地帯を抱える国々では山岳戦を行うための専門の「山岳部隊」を創設しています。

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山岳部隊は精鋭部隊

山岳部隊とは山岳戦を戦うための専門部隊です。高度な登山技術にサバイバル術、冬登山技術。そして山で戦うための基本戦術やカモフラージュ術、雪中戦術を備えています。その中でも特に大切なのが体力であり、寒さや容赦のない自然・地形の中でも、長距離移動できる高いレベルの体力が必要です。しかもこれは、平地ではなく空気の薄い高地においてになります。また、平地の兵士と比べて荷物は軽量化され装備は多く携行できません。特に重い重火器といった装備は無く、また、山間地域では電波状況も悪く、味方の火力支援を受けられない場合があります。兵器に頼れない戦いが多くなるので兵士個々人の能力が重要視されるため、山岳部隊は他の部隊よりも優れた精鋭部隊とされています。

山は戦略上、重要な拠点です。高い標高をほこる山は周辺を見渡せ、偵察・監視に最適で、また砲台を設置することで、重要な攻撃拠点になります。劣勢に立つ部隊にとっては複雑な自然環境は身を隠すの適しており、拠点、ゲリラ戦を展開するには最適な場所です。そこを攻略・防衛することは軍にとっては至上命題であり、山岳部隊の重要性が分かります。

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山岳部隊の歴史

山岳戦は第一次世界大戦から顕著なります。ヨーロッパ中央部の7か国に跨り2000~4000m級の山が連なるアルプス山脈でフランス・イタリアを始めとする連合国とドイツ・オーストリアを始めとする中央同盟国で戦闘が勃発します。しかし、両軍の多くの兵士にとって、そこでの戦闘は他の戦場はまったく異なって見えました。兵士は敵軍だけでなく、高地特有の酸素の薄さ、最大80°の急勾配、流れの速い川、岩だらけの斜面、さらに冬には雪と氷河の谷、雪崩に対処しなければならないと山岳戦の困難な課題に直面します。

冬の気温は氷点下まで下がり、冬は常に雪覆われます。​両軍は専門のスキー部隊を訓練し、兵士にはアイスピック、ロープ、防寒服、氷河用のゴーグルと他の兵士は持たないような道具を装備させます。​寒さと凍傷はアルプス山脈にいるすべての兵士を苦しませます。しかし、負傷しても当時はヘリなどはなく、下の診療所に連れていくことも中々できません。

当然のことながら、こうした状況下での戦闘は非常に困難でした。​砲兵隊は地形の起伏により照準も定まらず、敵を正確に識別することができず、効果的な砲撃を行う事は極めて困難でした。重たい装備をもった兵士の足は重く、進撃速度も遅く隊形はバラバラになります。足を滑らせ滑落する者、味方の砲撃によって発生した地滑りや落石で多くの兵士が命を落とします。

この時、既にイタリアにはアルピーノ、ドイツ・オーストリアにはアルペン猟兵と山岳を専門とする部隊がいましたが、まだその規模は小さく、冬山や銃火器をつかった山岳地での戦闘を経験した者は多くはありませんでした。

山岳地帯での戦闘を経験したヨーロッパ各国は山岳戦に特化した部隊の強化が迫られ今では多くの軍が山岳部隊を抱えています。最近でもイラク北部とアフガニスタンの山岳地帯で作戦展開中だった米軍は、登山の経験が豊富な兵士の必要性が明るみになり、米軍唯一の山岳部隊「第10山岳師団」が派兵されます。同師団は2001年以降、最も配備され部隊でもあり、その重要性が分かります。

自衛隊においては長野県松本駐屯地の第13普通科連隊が山岳部隊として有名です。

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