パキスタン陸軍は今年末まで軍事訓練と演習を中止すると発表した。理由は昨年から続く燃料不足のためだ。
ユーロアジアンタイムズの報道によれば、パキスタン陸軍は最近、全ての司令部と野戦部隊に12月まで全ての軍事訓練を中止するよう文書を出した。理由は予備燃料と潤滑油の不足だ。
パキスタンは昨年、国土の3分の1が水没するという未曽有の洪水被害を受け、国内経済が困窮。更にロシアによるウクライナ侵攻を受けての世界的な物価高、燃料費の高騰などで経済危機に墜ちいっている。インフレ率が高く国民が日々の食糧や燃料の調達に困る中、それは国を守るべき軍も同じ状況に陥る。
パキスタン軍は燃料価格の高騰と国の財政状況の悪化を念頭に置き、昨年、ガソリンとディーゼルを節約するために特別な措置を講じ、軍は毎週金曜日を「ドライデー」とし、輸送機関の運行を停止。更に大規模な軍事演習を取りやめ、駐屯地近くでの限定的な訓練を行うことにする。更に軍は財政が悪化する国を顧み、軍需物資を買うための予算35億ルピー(18億円)を返納している。
しかし、不足しているのは燃料だけではなかった。洪水により、多くの農地が壊滅、食料自給率が下がり、世界的な穀物高の中、財源不足で食糧不足にも陥る。今年2月、野戦部隊の指揮官たちは補給司令部にある書簡を送った。それは、国内の混乱を受けて、兵士への食糧供給が削減されているというもの。軍将校らは食糧供給と兵站問題について兵站参謀長および軍事作戦総局長と協議し、アシム・ムニル陸軍総司令官にこの問題を提起した。軍は兵士たち一日2回の食事が適切に行われていないと強調とした。
これらの問題に改善する兆しはなく、むしろ国内の状況は悪化している。今年5月にイムラン・カーン前首相が汚職などの容疑で逮捕されると、支持者が抗議、全国で大規模な暴動に発展、政情不安が一気に加速した。これに軍も万策尽きたのか、12月までの訓練を停止した。おそらく、燃料不足だけが理由ではないだろう。
パキスタンは南アジアではインドに次ぐ軍事力を持っており、グローバルファイアーパワーの調査では2023年1月時点で世界7位の軍事力を持つ軍事大国だ。3700両以上の戦車、1400機の軍用機、9隻の潜水艦、65万の現役軍人を抱えている。これを維持するためには莫大な費用が必要だ。更に東の隣国インドとは領土問題を抱え、西の隣国アフガニスタンとはテロ組織TTP(パキスタン・タリバン・タリバン)の小競り合いが続ている。世界的に防衛予算が拡大する中、軍は増額要求をせず、むしろ、国家予算における軍事予算の割合は2021~2022年の20%から2022~2023年は16%に削減されている。パキスタン軍は外貨を得るためにイギリスなどを通して、ウクライナに砲弾などを売却している。
Source
Pakistan Army Runs Out Of Fuel; Suspends All Military Drills & War Exercises Till Year End