アメリカ海兵隊は、新しい年次ライフル資格（ANNUAL RIFLE QUALIFICATION：ARQ）のトレーナー養成コースを開始しました。この新しいARQのバージョンは、2021年10月に現役のすべての海兵隊ユニットに正式に適用されます。
ARQとは
ARQは、1907年に策定された時代遅れの年次ライフル訓練（Annual Rifle Training：ART）に代わる新しい射撃プログラムとして2016年に開発が始まります。致死性と位置射撃を強調することによって、より現実的な「戦うための訓練」環境を提供するように設計された射撃プログラムで戦闘シナリオの射撃スキルをさらに発展させ、より熟練した戦闘力をもたらします。
旧プログラムと比較して、新プログラムは実際の戦場との統合に重点を置いており、難易度も大幅に向上しています。受験者の得点に応じてエキスパート、シャープシューター、マークスマンと射撃能力を区別し、射撃技能バッジが授与されます。
ARQでは、人間を模した的に顔から胸部の中央にかけて致死ゾーンがマークされています。このゾーンへの直接射撃がヒットと見なされ、このエリアから外れることはミスと判断されます。実際の戦場でも肩や腕、頬を撃っても敵を制止、または無効化することはできず、攻撃、移動をし続けます。したがって、海兵隊の兵士は、確実に致命的なゾーンにヒットする必要があります。
ARQの内容
海兵隊はヘルメットとボディアーマーなど実戦と同様の装備を着用した状態で100ヤード（91m）からスタートして500ヤード（457m）まで移動するARTの方式の代わりに、ARQでは500ヤードラインから射撃をスタートし、300、200、100ヤードラインに移動、さらに25ヤード（23m）と25ヤードから15ヤードの間でのクローズドアップ射撃。それから100、200、300、500ヤードラインへ戻りながら射撃を行います。海兵隊は、各ターゲットに配置された致死ゾーンにヒットさせる「destroys（破壊）」、設けられた「ドリル（訓練）」を実行する必要があります。
旧プログラムのARTでは、海兵隊員はある距離ですべてのショットをミスしても、それを別の距離で補うことができました。それはARQでは適用されません。海兵隊は全ての距離で合格最低スコアを上回らなければなりません。
25ヤードラインからの射撃訓練（ドリル）
1
最初の訓練は「failure to stop」と呼ばれる相手を制止させる射撃です。海兵隊員は25ヤード（23m）の距離にある標的の胸に2発、頭に1発ヒットさせなければなりません。これを4回行います。
2
2番目の訓練は1に似ていますがターゲットが2つになります。まず、2つのターゲットを射撃します。最初のターゲットの胸に2発、2番目のターゲットの胸に2発、頭に1発、そして、最初のターゲットの頭に1発ヒットさせます。これを4回行います。
3
3番目の訓練は、25ヤードラインから目標に向かって前進しながら、1の射撃を行います。これを2回行います。
その他の射撃訓練の内容
各距離から「destroys」といわれる顔から胸部の中央にかけてマーキングされた致死ゾーンへの射撃を行います。各射撃1回の「destroys」が必要です。
25ヤードライン（23）
25ヤードからスタンディングポジション（立ち撃ち）にてヘッドショット。これを6回行います。
100ヤードライン・ムーバー（91m）
8秒間露出する移動ターゲットをスタンディングとニーリング（膝立ち）それぞれの姿勢で2発射撃。これを7回繰り返します。この時、海兵隊はバリケードを使用することができます。
100ヤードライン・ペア
100ヤードラインと内容は同じで8秒間露出する静止したターゲット2つを射撃します。
200ヤードライン・ムーバー
距離が違うだけで、100ヤードラインと同じシナリオです。
200ヤードライン・ペア
100ヤードライン・ペアと同じシナリオですがターゲットの露出は10秒になります。
300ヤードライン（273m）
15秒間露出する静止ターゲットを2発射撃、これを8回繰り返します。この時、海兵隊員はスタンディング、ニーリング、ブローン（うつぶせ）の射撃姿勢を選択できます。
500ヤードライン（455m）
45秒露出する静止ターゲットを5発射撃、これを8回行います。射撃姿勢はスタンディングまたはブローンになります。
これらの射撃はM16、M4、M27 IARを用いて行われます。また、支給される光学機器の使用やバイポッドマガジン、ポーチなど装備品を使って銃を安定させることは実戦でも使われるので問題ありません。
射撃資格
成績に応じて以下3つの資格が与えられます。
エキスパート
あらゆる状況、あらゆる距離、あらゆる位置から脅威に致命的な影響を与えることができる射手。43から50の「destroys」と1つのドリルのクリア。
シャープシューター
ほとんどの状況、距離、位置から脅威に対して致命的な影響を与えることができる射手。31から42の「destroys」と二つのドリルのクリア。
マークスマン
特定の位置と距離、状況下で脅威に致命的な影響を与えることができる射手。15から30回の「destroys」と1つのドリルのクリア
現在、海兵隊員の65％がエキスパートの資格を得ており、6％が何も資格を得ていません。昨年行われたARQのパイロット・プログラムでは、エキスパートを取得した海兵隊員は受験者の約6%に過ぎず、10人に一人は全く資格を得ることはできませんでした。
https://www.marines.mil/News/News-Display/Article/2512965/new-annual-rifle-qualification-to-make-marines-more-lethal/
https://www.marines.mil/News/Messages/Messages-Display/Article/2509014/annual-rifle-qualification-implementation/
