タイ王国空軍は米国のTextronAviation社と、8機の”AT-6 Wolverine(ウルヴァリン)”軽攻撃機を購入するための総額1億4300万ドルの契約を締結しました。契約にはAT-6に加えて、地上支援装置、スペアパーツ、訓練および、その他の関連部品も含まれます。 AT-6 Wolverineにとっては初の海外注文になり、それはつまり、タイ空軍がアメリカ空軍に次いでAT-6を導入する空軍になったことを意味します。
AT-6 Wolverine(ウルヴァリン) は米国の大手軍事企業Textron Inc. 傘下のTextron Aviation Defense LLCとビーチクラフト社が設計および製造しています。米空軍が採用しており、ターボプロップエンジンのプロペラ機になりますが2021年2月に一号機が納入されたばかりの新鋭機です。
今回のタイ空軍(RTAF)への契約にあたり、Textron Aviation Defense LLCの社長兼CEOであるThomas Hammoorは以下のように述べています。
「我々は、タイ空軍が国境警備並びに密輸、麻薬対策及び人身売買対策のための幅広い任務を遂行するため、ビーチクラフトAT-6を競争的に選定したことを光栄に思う。RTAFは米国の安全保障上の重要な同盟国であり、アジア太平洋地域における最新鋭空軍の一つを運営している。その広範な市場調査と厳格な調達プロセスは、老朽化したAeroL-39アルバトロス航空機の既存のフリートを交換し、最新技術でフリートの能力を向上させるために、最善のコスト、スケジュール、およびパフォーマンスの調整を求めました。」
タイ空軍に納入される期待はAT-6 TH(Thaiの略式記号)と命名されます。2023年にトレーニングが開始され、2024年から運用が開始される予定です。
麻薬密売対策、国境監視のために購入
タイの北部、メコン川上流のミャンマー、ラオスと国境接する山岳地帯は「ゴールデン・トライアングル」と呼ばれる有名な麻薬の製造・密売地域です。西の隣国ミャンマーは正常不安で難民などの問題があり、東の隣国カンボジアとラオスはアジアの最貧国の一つであり、密入国、人身売買が社会問題です。南はイスラム武装組織によるテロが散発するなど、観光立国のイメージがあるタイですが、国内外に多くの問題を抱えています。RTAFは国境地帯でこれらに関わる犯罪組織や武装組織を監視、警戒するためにチェコ製の軽攻撃L-39を運用しています。
L-39は1960年代に開発された古い機体です。L-39はジェット機であり、プロペラ機のAT-6はL-39よりもランニングコストが低く、アビオニクスやセンサーはL-39よりも高性能になります。AT-6の飛行1時間あたりのコストは1,000ドル未満と軍用機の中でも格安です。またAT-6は米空軍の練習機であるT-6をベースにしており、操縦難易度も高くなく、米空軍パイロットの95%が操縦可能とされいます。AT-6の導入により、RTAFの警戒任務は大幅に効率化されます。
民兵や武装組織を相手にする非対称戦争においては、制空権が握れているのでランニングコストが高い高度な戦闘機や攻撃機を導入する必要がなく、コストが安くメンテンアスが簡単なプロペラ機が積極的に導入されています。麻薬カルテルを相手にしている中南米の麻薬戦争においてはAT-6と同タイプであるブラジルのエンブラエル社の”A-29スーパーツカノ”が軍や警察で広く利用されています。アフガニスタンでもタリバン相手に政府軍によって運用されていました。
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https://media.txtav.com/204668-royal-thai-air-force-awards-contract-for-fleet-of-beechcraft-at-6-aircraft-becomes-international-launch-customer-for-latest-usaf-light