SIG M17は米陸軍と米空軍が行った新しい正式拳銃を決めるXM17モジュラーハンドガンシステム(MHS)競争において、既存のベレッタM9、SIG M11に変わる正式拳銃として2017年に採用が決定した。ベースとなっているのはSIG社のP320だ。2019年に11月に米陸軍に10万挺の調達を完了し、海軍、空軍、海兵隊も順次採用する、米軍の次世代主力拳銃。
M9は耐用年数が超過していた
これまで軍が採用していたベレッタ社のM9(写真上)、SIG SAUER社のM11(P226)は80年代後半に採用され、30年以上も経過していた。バレルやスプリングなど消耗した部品は新品に交換していたがフレームは基本使い回しになり、そのフレームも限界に来ていた。銃としても旧態化し、アクセサリーを付けるためのレールがない、サプレッサーが装着できないなど少なからず弱点も抱えていた。特殊部隊などはM9は使わず、Glock19やSIG P229などより近代化した銃を選択していた。そこで、近代戦に適応した拳銃が求められ、新しいモデルの拳銃の調達が決められ、XM17モジュラーハンドガンシステム(MHS)の選定が行われた。
MHSの要件
MHSの要件としてはM9よりも正確で効果的であること。安全装置、様々な手のサイズに合うピストルグリップ、両利きに対応できるアンビシステム、アクセサリーが装着できるピカティニーレール、サプレッサーが装着できること、反動を軽減し命中精度を上げ、女性でも扱いやすい人間工学に基づいたデザインなど様々な要件が挙げられた。
競争にはM9のベレッタ社やGlock、FN Herstalなど計8社が参加した。2017年11月に最終決定が行われて選ばれたのはSIG SAUER社だった。
M17はP320のバリアント
M17はSIGが2014年に開発したP320(写真上)のバリアント(別形)。P320はストライカー式の発射メカニズムを採用し、モジュラー化したチャンバーは9×19㎜パラベラム弾、0.357 SIG弾、.40S&W弾、.45 ACP弾など様々な種類の弾丸が使用が可能だ。これをMHSの要件に合うように改修したのがM17だ。しかし、様々な弾丸を扱えるモジュラー式のチャンバーは銃の改ざん防止装置のため 9×19㎜パラベラム弾しか使用できないようになっている。装弾数は標準が17発、拡張マガジンで21発装填できる。P320の標準カラーはブラックだが、M17の標準カラーはコヨーテブラウン、 ステンレス製のスライドには耐食のPVDコーティング が施されている。
SIG Airsoft/VFC M17 ガスブローバックピストル (Official Licensed)
キャリーモデルのM18
M17はフルサイズモデルで、キャリーモデルとしてコンパクトなM18がある。基本的な性能と装弾数は変わらず、より携行性、コンシールドキャリーに優れたモデルだ。主に士官や特殊作戦を担う隊員に支給を予定している。海軍と海兵隊はM17ではなくM18 を正式拳銃として採用することを決定している。
M17 | M18 | |
834g | 重量 | 737g |
203㎜ | 全長 | 183㎜ |
120㎜ | 銃身長 | 98㎜ |
米軍全軍に配備予定
M17とM18は米軍全体の正式な拳銃、サイドアームになり、42.1万挺の調達を予定している。初回納入として2017年11月に2000挺のM18が納入され、先行して米陸軍第101空挺師団に配備された。その後、2019年11月に10万挺のM18が米陸軍に納入された。陸軍が195,000、空軍が130,000 、海軍と海兵隊はM18のみ海軍61,000 、海兵隊が 35,000の調達を予定している。