「世界最強の狙撃銃・スナイパーライフルは何か?」と定義づけするのは難しい。狙撃は高度な作業で銃だけではなく、射手の技量によるところも大きいからだ。しかし、優れた狙撃手は優れた狙撃銃を選ぶ。優れた射手との組み合わせで数々の記録を作った狙撃銃がある。それが「マクミラン TAC-50」だ。記録だけみれば、TAC-50が世界最強のスナイパーライフルといえる。
TAC-50とは
TAC-50はアメリカのマクミラン社(McMillan Firearms Manufacturing, LLC)が開発製造する対物・長距離狙撃銃になる。Tac-50は、50口径のボルトアクションライフルで5発入りのボックスマガジンを使用する。対物ライフルとしては比較的軽量で11.8kg、全長は1448mm、737mmのバレルは高品質のLilja(リリヤ)バレルを使用。ストックはマクミラン独自のグラスファイバーストックを使用している。専用のスコープはなく様々な照準器に対して互換性がある。銃口には独自のマズルブレーキが付属しており、これにより50口径の激しい反動を軽減し精度を高めている。
使用する弾丸は.50BMG(12.7x99mm NATO弾)。これはM2ブローニング重機関銃や戦闘機の機関銃の弾丸と同じ大きさになる。しかし狙撃用では機関銃用とは異なる高精度弾丸を使用している。
TAC-50は1990年代より開発が始まり、2000年以降から配備され、米海軍特殊部隊シールズがMk15、カナダ軍がC15という名で採用。フランスやイタリア、イスラエルの特殊部隊なども採用している。
3度の世界最長の狙撃を記録
TAC50を有名にしたのが、この銃によって打ち立てられた数々の狙撃距離の世界最長記録だ。世界記録を三度も塗り替えている。
2002年 アロン・ペリー 2310m
最初の世界記録は2002年3月にカナダ軍の狙撃手が更新した記録だ。カナダ軍軽歩兵の狙撃チームに所属していたアロン・ペリー(Arron Perry)はアフガニスタンでアナコンダ作戦に参加していた。そこで、彼はTAC-50を用いてアルカイダとタリバンを長距離射撃で殺害する。この時、記録した射撃距離が2310mになり、これは1968年に米軍のスナイパー”カルロス・ハンコック”が樹立した2286mを34年ぶりに塗り替える記録となった。
2002年 ロブ・ファーロング 2430m
しかし、そんなアロンの記録はわずか数日で破られる。しかも、その記録を破ったの同じ部隊に所属する同僚のロブ・ファーロング(Rob Furlong)だった。彼はTAC-50を持って山腹に位置し、RPK機関銃で攻撃するタリバン兵を狙った。1発目は外れたが2発目で敵を仕留めた。その距離は先日、同僚のアロンが打ち立てた記録を120m更新する2430mだった。
2017年 JTF-2 スナイパー 3540m
ロブの記録はその後、2012年にイギリス軍のスナイパー”クレイグ・ハリソン”がL115A3ライフルで2475mの狙撃に成功したことで記録が破られる。2017年にはオーストラリア軍のスナイパーがバレットM82A1ライフルで2815mの狙撃を成功させた。どちらもTAC-50とは異なる狙撃銃だ。しかし、2017年にTAC-50が再び、王座を取り戻す。しかも、記録を作ったのはまたもカナダ軍だ。カナダ軍の特殊作戦司令部傘下の特殊部隊JTF-2のスナイパーがイラクにてTAC-50を用いて、それまでの記録を大幅に上回る3540mの狙撃を成功させる。発射から目標までの着弾に10秒もかかるという超長距離狙撃だ。狙撃手の情報は隊員の身の安全とまだ現役されるため公表されていない。
[adcode]Photo by Rank_XJTF-2(Joint Task Force-2)はカナダ統合軍の精鋭兵士で構成された、カナダ軍最強の特殊部隊になり、世界最長の狙撃記録を作ったスナイパーが在籍するなど優れたス[…]
現在、狙撃の世界記録のTop5のうち3つがTAC-50によって打ち立てられている。そして、その記録を作ったのは全てカナダ軍の兵士になり、TOP5にカナダ軍スナイパー3人がいることになる。TAC-50とカナダ軍のスナイパーの優秀さが分かる結果だ。
TAC-50の後継機
マクミランはアフガニスタンでのカナダ軍の成功を機に、2012年にTac-50 A1とTac-50 A1-R2の2つのTac-50後継機を開発している。
TAC-50 A1
A1は、より長い分解式のテイクダウングラスファイバーストック、より軽量で丈夫なバイポッド、再設計されたバットストック、自動ロック式マガジンラッチなど、多くの実用的なデザインの改善をおこなった。
TAC-50 A1-R2
A1-R2には独自の油圧式リコイル緩和システムが追加されており、.50 BMGチャンバーが生成するフリーリコイルを減らし、ユーザーの快適性を高めている。