アメリカ空軍は2024年8月、ボーイング社との低率初期生産契約に基づいて製造された最初のMH-139Aグレイウルフ多用途ヘリコプターを受領したと発表しました。アメリカ空軍はこれまでに6機のグレイウルフを受領していましたが、それらはすべて試験・評価用の航空機であり、量産タイプ、実戦配備用の機体の納入は今回が初めてになります。ボーイング社は、低率生産契約の一環として、合計26機のMH-139Aヘリコプターを納入する予定です。
The first production #MH139 helicopter has joined the @USAirForce fleet!
— Boeing Defense (@BoeingDefense) August 5, 2024
This Grey Wolf will be based at @MalmstromAFB to safeguard ICBMs, transport personnel, and aid search and rescue efforts. The MH-139 enhances capability and cuts sustainment costs compared to its… pic.twitter.com/9ydVxMPHLh
MH-139Aグレイウルフは、実績のあるイタリアのレオナルド社の15人乗り商用ヘリコプター「AW139」をベースにした軍用マルチミッションヘリコプターです。ベトナム戦争時から半世紀に渡って使用されてきた「UH-1N Twin Huey」に代わる機体として2018年9月に調達が決定しました。MH-139の主な用途はワイオミング、モンタナ、ノースダコタ、コロラド、ネブラスカにある空軍の大陸間弾道ミサイル基地の防衛です。その他、米国政府職員と治安部隊を速やかに輸送するために設計されています。
最先端のアビオニクスシステムと高度なフライトデッキ機能を備え捜索・救助活動など、さまざまな軍事タスクをこなすこともでき、速度、航続距離、耐久性、積載量、および生存分能力の分野でUH-1Nヒューイの能力のギャップを埋めますヒューイより50%速く、50%遠くまで飛び、30%大きいキャビンを持ち、これまでのプラットフォームよりも2200kg多く荷物を持って離陸することができます。
オープンアーキテクチャのグラスコックピット、気象レーダー、強化された地上接近警報、レーダー高度計、エンジンIRシグネチャ低減、軍用UHF/衛星通信などを搭載。完全な自動操縦機能を導入し、高度なフライトデッキ機能と改善された状況認識を備えた最新のアビオニクスシステムにより、パイロットと乗務員の作業負荷は軽減されます。防護面において、チャフ/フレアやミサイル警報などの防御システム、コックピットおよびキャビンの防弾、耐衝撃性セルフシール燃料タンクなどが含まれます。キャビン部分には2挺の7.62mm M240機関銃をオプションで装備できます。最高速度は268km/h、航続距離は1432km。乗員は15名で救急用途では担架最大 4 台と医療要員 5 名が搭乗できます。
MH-139Aグレイウルフは運用コストの削減、信頼性と保守性を向上させ、航空機全体のライフサイクルの改善は空軍にとって10億ドル以上の節約になります。しかし、機体の単価は当初より15%も上昇。納期スケジュールも大幅に遅延します。15%を超える違反は「重大」とみなされ、30% の違反は「致命的」とみなされます。このような状況もあり、当初84機を予定していた調達数は42機と半減されました。しかし、全体の調達金額は11億ドル減少しています。
MH-139Aグレイウルフは日本の横田基地にも配備を予定していましたが、調達数の大幅削減により、核安全保障部隊のみに使用すると発表しており、アメリカ国内での配備に限定されるかもしれません。UH-1Nヒューイも随時入れ替わる予定でしたが、運用は伸びるかもしれません。