”ネイビー”と聞くとあなたは「海軍(ネイビー)」と「紺色(ネイビーブルー)」、どちらを思い浮かべるだろうか?前者を思い浮かべる人はミリタリー好きで、多くの人は後者を思い浮かべるのではないだろうか?両者は英語で「NAVY」と同じ綴りなるのだが、海軍と紺色には深~い関係がある。
ネイビーは海軍の色という意味
今日の日本ではネイビー(NAVY)というと、紫がかっている暗い青を指す色「紺色」のことを指す単語としてが一般的で特にファッションにおいてはそれが顕著だ。筆者は昔、アパレル業界に居たことがあるが、紺色という言葉はほとんど使う事はなく、ネイビーやネイビーブルーと表現していた。しかし、このネイビーという単語は元来「海軍」を示す単語である。イギリス海軍の制服が紺色であったことから、英語圏ではその起源に関連付けて紺色を”ネイビーブルー”と呼んだ。そして、いつしか日本にも広まったのだ。そもそも、日本には戦後、海軍(※海上自衛隊は軍ではない)が無くなってしまい、英語が浸透した今でも海軍の意味でネイビーを使用する機会はほとんどなくなり、必然的に紺色の意味として浸透してしまっているのかもしれない。
海軍でのネイビーブルーの歴史
ネイビーブルーの制服は海上自衛隊を始め、世界の海軍で一般的な制服の色となっている。初めて軍服に取り入れたのはイギリス海軍(ロイヤル・ネイビー)だ。時は1748年、イギリスが海洋国家として世界の覇権を取る前の時代になる。
ヨーロッパにはもともと紺色、藍色といった青系の染料の原料となるものは少なく、青い衣服は少なかった。しかし、インドとヨーロッパの交易が始まる13世紀頃からインド産の青系染料インディゴが輸入され、ヨーロッパでも青系の衣服が広がっていく。そして、1600年にイギリス東インド会社を設立されると、安価なインディゴが大量に輸入されるようになった。インド、アジアでの交易を皮切りに世界進出を活発化させるイギリスは海軍をより戦略・戦術的に発展させていく。その中で将校、水兵が着用する制服も整備された。
当時の海軍は一度海に出れば、数カ月、数年は帰国できない長く過酷な遠征だ。そのような環境に耐える制服が必要だった。インディゴ染料は豊富で手頃な価格で購入でき、大量の制服を作るのに適していた。そして、他の染料とは異なり、色が浸透するのが早く、海上での照り付ける太陽や塩水に長時間さらされても色あせないという特徴があった。また、青系の色は海と空を想起させ、海軍に打ってつけの色だった。
その後、18世紀後半から20世紀前半にかけて世界の海を支配したイギリス海軍の紺色の制服は海軍の象徴となった。各国の海軍はこの世界一のイギリス海軍をモデルに創設、編成され、その制服も模倣された。世界中の海軍の制服も紺色になり、NAVYのネイビーブルーの制服の伝統は世界中で続いている。
普段何気に無く着ているネイビーブルーの服は海軍の色を表しており、海軍の権威を示す色でもあるのだ。