アメリカ空軍は、炭素変換会社のTwelveと提携して、空気中の二酸化炭素(CO2)をジェット燃料に変換させることに成功しました。実用化できれば航空機はいつでもどこでも燃料を給油でき、燃料の心配をする必要が無くなります。
燃料革命
米空軍エネルギー運用局は2020年、炭素変換会社Twelveを提携し、独自の技術でCO2を「E-Jet」と呼ばれる航空燃料に運用可能な低コスト合成燃料に変換できることを実証するパイロットプログラムを開始しました。2021年8月、TwelveはCO2からジェット燃料を生産することに成功。プロジェクトは大きなマイルストーンに達し、変換がうまくいったことを証明。合成カーボンニュートラル燃料を大量に製造するための条件を整えたことで、大きな節目を迎えました。プロジェクトの第1段階は12月に終了する予定で、プロセスと実証結果の詳細な報告書を提出します。
米空軍にとって、今回の実証テストの成功の意味は大きく、航空作戦にイノベーションを与えます。軍事作戦にとって最も重要なのは燃料の輸送と補給とです。十分な燃料無くして作戦を行うことはできません。今回の成功により、戦闘機や爆撃機は世界中のどこからでも航空燃料にアクセスできることができ、燃料の心配をする必要がなくなります。
燃料輸送を大幅削減
最近の軍事作戦や演習では燃料の輸送、貯蔵が国内外の部隊にもたらす重大なリスクであることを強調していました。戦争真っ只中のアフガニスタンでは、死傷者の30%以上が燃料・水輸送車への攻撃でした。先進兵器システム、電子機器装備が増える中、その運用に必要な電力が増加するため、燃料需要は今後さらに増加すると予想されています。
「歴史が教えるように、ロジスティクスサプライチェーンは、敵が最初に攻撃するものの1つです。燃料と物流の需要を減らすためにわれわれが何をするかは、リスクを回避し、将来の戦争に勝つために極めて重要になるだろう。」と、運用エネルギー担当の空軍副次官補ロベルト・ゲレーロは述べています。
現在、米空軍は国内でも海外でも商業燃料に頼っています。空軍は、航空機の燃料が各基地に確実に供給されるようにトラック、航空機、船舶と様々な組み合わせを用いて輸送していますが、多くの輸送領域、特に紛争時は、サプライチェーンの従来のアクセスポイントに容易に到達することができるとはかぎりません。
Twelveの炭素変換プラットフォームは、高度なスキルを持った燃料専門家が現場にいなくても、配備されたユニットが必要に応じて燃料を作り出すことを可能にします。空軍は、この技術が石油ベースの燃料の補助的な供給源となり、燃料の供給が困難な地域の需要を減少させる可能性があると見ています
「炭素転換によって、私たちは航空を石油サプライチェーンから解き放ちます。空軍は、革新的な航空燃料の新たな供給源を推進するための我々の活動における強力なパートナーです」とTwelveの共同創業者兼CEOであるNicholas Flanders氏は述べています。
しかし、いくつか懸念はあり、合成燃料を生成するためには電力と水が必要です。つまり、生成するための再生エネルギーを発電するソーラーパネルや風力発電機と水を確保する必要があります。また、今のところは合成燃料100%ではなく、合成燃料と石油燃料の50/50ブレンドが最適になります。電力と水の確保、若干の燃料輸送の課題は残っています。
合成燃料とは
合成燃料は、CO2(二酸化炭素)とH2(水素)を合成して製造される燃料です。複数の炭化水素化合物の集合体で、 “人工的な原油”とも言われています。 合成燃料は、バイオマス、石炭、または天然ガスを燃焼させることによって生成されますがTwelveのテクノロジーは、化石燃料の必要性を排除し、大気から回収したCO2をリサイクルして合成ガスを生産し、水と再生可能電力のみをインプットとして使用してCO2を変換します。
次の段階では、この技術を使用して大量の合成燃料を生産します。