アメリカ海軍は大西洋でのロシアの潜水艦の脅威に対抗するために、東海岸にアーレイ・バーク級駆逐艦からなる新しいタスクフォースグループ「Greyhound(グレイハウンド)」を設立しました。
9月27日、フロリダのメイポート海軍補給基地に停泊するミサイル駆逐艦USSトーマス・ハドナー (DDG 116)の艦上で行われたイベントでブラレンダン・マクレーン海軍地上軍大西洋司令官とブライアン・デービス海軍少将によって正式に「タスクグループ・グレイハンド(TGG)」が発表されました。
TGGはロシアの脅威に対応するために編成された小艦隊です。ロシアは近年、射程2,600kmの巡航ミサイルを搭載する新型の885Mヤーセン型原子力潜水艦、大陸横断、核魚雷搭載可能な無人潜水艦ポセイドンなどを開発配備するなど海底における戦力、作戦能力を向上しています。これらロシア海軍の脅威に対し、速やか、且つ継続的に対応を行うための「最適化された艦隊対応計画(Optimized Fleet Response Plan:OFRP)」のもと編成されたのがTGGになります。TGGはザ・サリヴァンズ(DDG-68)、ドナルド・クック(DDG-75)、コール(DDG-67)、グレーヴリー(DDG-107)の4隻のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦からなり、9月1日に密かに初期作戦能力を達成していました。アーレイ・バーク級駆逐艦は最高峰の対潜システムSQQ-89、対潜用の324mm3連装魚雷発射管やVLA対潜ミサイル、対潜哨戒用としてSH-60シーホークヘリを搭載しており、潜水艦との海底戦において優位性の維持を可能にします。
TGGはフロリダのメイポート補給基地とバージニアのノーフォーク海軍基地を拠点に活動。2隻交代制で24時間365日稼働し、大西洋の領海近くの海域に敵潜水艦を発見した場合、速やかに現場に急行し、警戒及び追跡するなどして脅威を排除します。現在、他の任務に就いている艦もあり、正式運用は今後の保守と訓練を経た後になり、2022年6月までに完全な運用能力を得る予定です。
「グレイハウンド」という名は2020年にAppleTV+で公開された映画『グレイハウンド』を想起させます。この映画は第二次大戦中、アメリカからイギリスに向かう補給艦隊を警護するアメリカ海軍駆逐艦グレイハウンド(USSキーリング)が大西洋横断の道中、ナチス・ドイツのUボート艦隊の襲撃に遭い、補給艦隊を守るために奮戦する話です。