ロシア軍は先日、弾道ミサイルでウクライナ軍がドイツから供与を受けた先進的な防空ミサイルシステム「IRIS-T SL」を破壊する動画を公開した。ウクライナにとっては痛い打撃と思われたが、破壊された物は本物ではなく、実はデコイであることが分かった。
The Russians hit an abandoned air defense base near Kharkov with Iskanders.
— Getty (@Getty776) February 1, 2024
Ukraine had placed mock-ups of the radar and launcher of the Iris-T air defense system there.
The cost of one Iskander is $3 million, and the mock up Air defense is $10k. 😁 pic.twitter.com/BxcVfDU268
1月31日、ハリキウ州の防空陣地に設置されたウクライナ軍の中距離防空ミサイルシステム「IRIS-T SL」がロシア軍の戦術弾道ミサイル「イスカンデル」によって破壊される映像が公開された。IRIS-Tはドイツ製の防空ミサイルシステムで100%近い迎撃率を誇る先進的なシステムになる。IRIS-Tはレーダーユニットとミサイルランチャーシステムで構成されており、映像ではその2つが確認できる。レーダーユニット側はそれが活動中であることを示すようにレーダーは回転している。そのレーダー側にミサイルは落ちた。IRIS-Tの破壊に成功したのだから、ロシア側は狂喜乱舞、親ロシアの軍事ブロガーやインフルエンサーはこぞって、この動画を拡散した。しかし、その後の分析でこのIRIS-Tがデコイ、つまり、偽物であることが分かった。
映像を見る限り、防空陣地に人影、守備隊が見当たらない。通常、ウクライナ軍が貴重な防空ミサイルシステムをこのような無防備な状態で野ざらしでは放置しない。また、ミサイルランチャーをよく見るとガスピストンリフト機構が欠如しており、ミサイルを内蔵していないハリボテ、デコイであると指摘されている。では、レーダーが回転していたレーダーユニットの方はというと、これもデコイとされている。昨年12月のウクライナメディアpravdaの報道によるとウクライナはIRIS-Tのおとり用に電動回転式の「レーダーもどき」を搭載した1万ドルのデコイを製造しており、破壊されたのはこのデコイとされている。そして、この1万ドルのデコイを攻撃したロシア軍の戦術弾道ミサイル「イスカンデル」の価格は300万ドルとされている。そもそもドイツ製の先進的防空ミサイルシステムがロシアの弾道ミサイルの攻撃を防げないようであれば、兵器の信頼に関わる。
キーウ・ポストの報道によれば攻撃されたこの場所はかつてウクライナのS-300防空ミサイルシステムが破壊された場所で、その後、防空陣地としては放棄されていた。