ウクライナへのF-16戦闘機の供与が目前に迫る中、ウクライナ空軍のエース・パイロットである”デニス・ヴァシリュク中佐”が前線での任務中に戦死した。
ウクライナ空軍の第831戦術航空旅団は18日土曜、航空飛行隊の第一副司令官であり、参謀長、そしてパイロットであるデニス・ヴァシリュク中佐が17日金曜、前線での戦闘任務中に戦死した事を報告。旅団はFacebookページ上で以下のように彼の戦死について綴った。
私たちはパイロットだけでなく、信頼できる戦闘兄弟であり、友人であり、素晴らしく明るい男を失った。先日、参謀長、航空飛行隊第一副司令官のデニス・ヴァシリュク中佐が戦闘任務中に死亡しました。デニス・ヴァシリュクは、ロシアの本格的な侵略開始以来、彼は数十の戦闘任務に就き、「勇気勲章」の保持者である。デニスは家族、人生、奉仕、私たちのウクライナの空を愛していました。友よ、あなたは永遠に戦術航空クルーの列にいる! デニスの家族にお悔やみ申し上げます。
パイロットは死ぬのではなく、空に永遠に留まる!英雄の永遠の名誉と記憶
831 бригада тактичної авіації/”831 tactical aviation brigade”
デニス・ヴァシリュクは31歳でSu-27戦闘機のパイロットだった。彼の戦果は不明だが「勇気勲章」を授与されていることから、数々の危険なミッションを成功させてきたエースパイロットである事が分かる。彼が戦死した状況について、ウクライナ軍は明かしていないが、ロシア軍は17日にウクライナ軍のSu-27を撃墜した事を発表している。撃墜地点は不明だがヴァシリュク中佐は前線で対地攻撃を行っていた最に撃墜されたようで、ロシア側の発表によれば空対空ミサイルR-37Mによって撃墜された。R-37Mは最大射程300~400kmを誇る長距離空対空ミサイルで敵機のアウトレンジから攻撃でき、ロシアの領空内からでもウクライナの前線を射程に納める。最初は慣性誘導で終末誘導でセミアクティブ・レーダー、またはアクティブ・レーダーを使用、マッハ5で飛翔する。R-37は主にMig-31用として使用されてきたが、改良型のR-37MではSu-35、Su-57といった新鋭機への搭載が可能になっている。Su-35/57に搭載されているアクティブ・フェーズドアレイ・レーダー(AESA)のベルカは最大400kmの空中目標を探知するため、おそらく、どちらからから発射された可能性が高い。ロシアの最新鋭機で第5世代ステルス戦闘機であるSu-57は最初、出し惜しみされていたが、今年2月頃から積極的に使用し始め、攻撃の頻度は増加し続けているというレポートが上がっている。ウクライナ空軍は今月13日にもSu-27をロシア軍によって撃墜されている。
F-16戦闘機の供与を目前に控えていた
ウクライナへの供与が決まっているF-16戦闘機。最新の情報によると早ければ来月6月、遅くとも7月頃には最初の機体がウクライナに納入される予定で、それまでに12人のパイロットがデンマーク、英国、米国で10か月の訓練を終え、実戦でF-16を操縦できるようになる見込みだ。今のところデンマークが16機、オランダが24機、ノルウェーが2機の計42機の供与が予定されており、供与数は不明だが、ベルギーも供与を発表している。ただ、最初に納入される数は6機と少ない。どの国が最初の6機の納入を行うのかは明らかにされていないが、デンマークは夏までに納入する事を約束しており、初回分はデンマークの可能性が高い。その後の納入予定は不明だが、ベルギーは当初2025年に供与するとしていたが、2024年中に前倒しすると発表している。ウクライナ空軍の主力戦闘機であるSu-27、Mig-29の両機は2年以上に及ぶ戦争で出撃回数が増加、限界に達している。また、今回、Su-27が撃墜されたように稼働可能な機体、経験豊富な士官を含む航空要員のかなりの部分を失っている。一刻も早いF-16の供与、後進育成が待たれる中、ウクライナ空軍は経験と能力を合わせ持った貴重なパイロットを失ってしまった。