ウクライナのゼレンスキー大統領は8月27日の記者会見で、ロシアが8月26日に行った大規模な空襲に対し、ウクライナ空軍が8月初めに入手したばかりのF-16戦闘機を領空の防衛のために出撃させ、ミサイルやドローンを撃墜した事を発表した。公式情報としてはウクライナ軍のF-16初の撃墜記録になる。
8月26日、ロシアはウクライナの24州のうち15州を標的とした大規模な空襲を実施した。これはロシアによる侵攻開始以降、最大級空襲の一つであり、200機以上のミサイルとドローンが使用された。空襲はキーウ水力発電所の一部であるキーウ近郊の水力ダムといったエネルギー施設や燃料施設を襲った。ダム本体への直撃はなんとか防ぎ、ダムは崩壊しなかったが重要なインフラが破壊され、停電などが発生。また少なくとも7人が死亡、47人が負傷した。
ウクライナ軍の地上の防空部隊と空軍はロシアから飛来したミサイル127発のうち102発、ドローン109機のうち99機を迎撃、撃墜することに成功したと発表している。ゼレンスキー大統領は空襲翌日の記者会見で、F-16戦闘機が今回、領空防衛のために参加した事を明らかにし、「この大規模なロシアの攻撃中、我々はF-16の助けを借りて多数のミサイルと無人機を撃墜し、非常に良い成果を上げた」と語った。 8月初めにウクライナ空軍に配備されたF-16が防空ミッションに出撃した事が明らかになったのは今回が初になり、ミサイルや無人機の撃墜を記録するのも初になる。ただ、F-16が何機のミサイルと無人機を撃墜したのかは明らかにしていない。
F-16にはアメリカから供与された中距離対空ミサイルのAMRAAMと短距離対空ミサイルのサイドワインダーを搭載している。撃墜に使用したのはおそらく、この両ミサイルになると思われる。NATO規格のF-16はパトリオット防空ミサイルなど西側製兵器とデータリンクし、ミサイルや無人機を捕捉、迎撃能力は、これまでのソ連製戦闘機より各段に高い。しかし、いかんせん、まだ機体数が少ない。ウクライナは8月初旬にオランダとデンマークからF-16の最初のバッチ約10機を受領したが、供与総数の10分の1にしかすぎず、一度に運用できる機体は数機だけだ。広いウクライナ領空を防衛するには圧倒的に数は足りない。ゼレンスキー大統領は、F-16戦闘機を供給したウクライナの国際同盟国に感謝の意を示したが、より多くの戦闘機と訓練されたパイロットの必要性を強調している。
また、ロシアのミサイル・無人機攻撃を防ぐ最も効率的な方法は発射拠点を無力化することであり、ゼレンスキー大統領はF-16によるロシア領内の軍事拠点の攻撃許可を再三、アメリカに求めている。