ウクライナ軍に新設された「第155機械化旅団」の兵士1700人が脱走したとして、ウクライナ当局は年明けから捜査を行っていたが、6日、ウクライナ陸軍司令官ミハイロ・ドラパティ将軍は同旅団に問題がある事を認め、ゼレンスキー大統領に報告した。
複数のウクライナメディアは12月31日、2024年3月に新設された「第155機械化旅団」の兵士1700人が脱走したと報じた。この報道を受け、ウクライナ国家捜査局は今年初め、脱走と職権乱用の疑いについて捜査を始めた。脱走の原因として部隊の創設と管理に問題があったことが指摘されており、軍指導部の指揮と組織管理が不十分なために多数の死傷者を出し、AWOL(無断離隊)に繋がったと指摘されている。陸軍司令官であるミハイロ・ドラパティ将軍は6日、同旅団に問題があった事を認め、ゼレンスキー大統領に報告したとウクライナメディアが報じている。将軍は「軍部隊の無許可放棄は数多く見られるが、これには理由がある。脱走は恐怖感や、時には戦闘作戦における実践経験の不足がある。」と述べたが、「組織的な欠陥のほとんどは、地上軍司令部、ウクライナ軍参謀本部、作戦司令部によって犯された」と、将軍はSNSで述べ、上層部の責任を認めている。最大の課題は「部下を直接管理する中級司令官の効率性とモチベーションの低さ」とも述べており、将軍は「あらゆるレベルの経験豊富な将校と指揮官の採用」に重点を置いた適切な解決策がすでに実施されていると述べた。将軍は陸軍部門を強化するために「根本的な改革」を導入すると述べている。また、ウクライナのルステム・ウメロフ国防相は別の声明で、陸軍司令部の包括的な見直しを実施すると発表。「勝利には経験の深い分析と、間違いに対する正直な理解が必要だ」と語っている。
第155機械化旅団
🇺🇦 Formée en France à l’automne, où 2300 Ukrainiens ont été entraînés par des Français, la brigade "Anne de Kiev" connaît de nombreuses désertions. Près de 1 700 soldats l’auraient ainsi quittée, notamment en raison d’un manque d’organisation.
— Le20h-France Télévisions (@le20hfrancetele) January 6, 2025
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第155機械化旅団はウクライナ陸軍の拡大計画の一環として、新設された9個旅団の一つで、27歳から25歳に引き下げられた新たなウクライナ動員法の規定に基づいて動員された若者を主体に2024年3月に編成された。部隊規模は4500人ほどとされ、その内の半数がフランスの支援の元、同国で訓練を受けた。それもあってか、旅団は11世紀にフランス国王アンリ1世と結婚したキーウ生まれの王女にちなんで「キーウのアン(Anne de Kiev)」という愛称が名付けられた。旅団にはフランスから供与された18台のカエサル自走榴弾砲、18台のAMX-10RC装甲戦闘車両、128台のVAB装甲兵員輸送車が組み込まれた。
しかし、旅団には必要な資源、人員、指揮官が不足していた。旅団の配置は編成から3か月後の2024年6月に始まったが、7月と8月には2550人以上の兵士が他の部隊の補充のために引き抜かれ、旅団の4か月に及ぶ編成作業が無駄に終わる。それを補うため、10月にフランスに2300人が訓練のために送られたが、その時までに、既に935人の兵士が脱走していた。そして、フランスメディアの報道によると仏軍当局者の話として、50名のウクライナ兵がフランスで訓練中に脱走している。また、この間にウクライナ国内で集められた新兵700人が旅団司令官に会う事無く脱走したとされる。その責任か、司令官は解任されている。同旅団は2024年11月に東部ドネツク州ポクロフスクに配置されたが、戦闘開始から数日間で大きな損失を被ったと伝えられている。2025年1月時点で旅団は解散されており、隊員たちは戦闘経験豊富な他の旅団に再配置されている。
155機械化旅団の脱走は氷山の一角にすぎない。2024年12月にウクライナ軍筋の話として、10万人のウクライナ軍兵士が戦闘や前線の拠点を離れ、軍を脱走しており、軍司令官や兵士らによると、部隊全体が持ち場を放棄するケースもあり、防衛線が脆弱な状態となり、領土の喪失が加速していると報道された。大量の脱走をうけ、昨年11月29日、ウクライナで新しい法律が施行され、許可なく部隊を離れた軍人が刑事訴追を受けることなく軍務に復帰できるようになった。2025年1月1日までに帰還する兵士には恩赦が与えられる。ウクライナ軍法執行局は、新たな無断離隊恩赦法が施行されて数日後の12月3日、毎日約1,000人の兵士が帰還していると発表している。