米陸軍環境医学研究所は、寒冷地での駐留と作戦能力を拡大する陸軍の取り組みに合わせて、凍傷や低体温症など寒冷地特有の怪我の予防に役立つ兵士向けのアプリを開発した。
「Cold Weather Ensemble Decision Aid (CoWEDA) 」 と呼ばれるこのアプリは、兵士が現在の気象条件、作業活動、服装を入力すると、寒冷地での傷害のリスクを計算できる。報告書によれば、状況や任務に応じて衣服の断熱材がどの程度必要かを判断するためにも使用できるという。
「寒冷な気候環境で働く兵士は、凍傷や低体温症などの寒冷傷害を負うリスクがある」 と、2022年の陸軍部隊衛生報告書は述べている。「兵士は厳しい状況で訓練や活動を行うことが多いため、これらの負傷を防ぐことが重要です。北極圏が国家安全保障にとってより重要になるにつれて、これは特に当てはまります。」と報告書は綴っている。
寒さによる負傷を減らすことは、兵士の健康を強化し、任務の即応性を高める上で重要である。報告書によれば、2013年から2021年にかけて、寒冷地での兵士の負傷は凍傷382人、凍傷以外の寒冷負傷者1,059人、低体温症409人にも及ぶ。これらの負傷を負った兵士は、最大5日間の任務喪失を引き起こし、年間の総コストは約450万ドルにも上る。部隊の即応性を低下させ、任務失敗を高める可能性がある。報告書によると、研究者らはアプリのアップグレードに取り組んでおり、 今後「濡れた衣服の衝撃などの複雑な相互作用」 や 「体の特定の部位における凍傷リスクの正確な予測」 など、より詳細な防寒対策が可能になるという。
CoWEDAはアメリカの国家安全保障にとって極めて重要な地域である北極圏をより重視する軍の取り組みに沿って開発された。温暖化により、海を閉ざしてきた北極の氷が溶けたことで、北極海航路が戦略上見直され、資源開発などアメリカとロシアによる主権争いが激化。そして2018年には中国が「北極の近隣国家だ」と宣言し、ここに参入。世界の三大大国による北極を巡る競争が今後、激化する懸念がある。
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