アメリカ陸軍は、10月末に行われた演習「Project Convergence 22」で、無人機・ドローンを利用した戦場への輸血パックの輸送テストを実践しました。
モハベ砂漠でお紺われた演習では戦場に大量の死傷者が出たことを想定して行われ、FVR-90ドローンが負傷者がいる地点まで飛行。ドローンは着陸することなく、輸血パックを投下。パックにはパラシュートが装着されており、ゆっくりと降下。地表に落下した輸血パックは衛生兵に回収され、負傷者に輸血されます。
出血死は4割を占める
Oxford Academicの発表によると事故、戦場での負傷に関わらず、外傷性による死因の35~40%が出血死によるものです。大量出血の際は素早い止血と早急な輸血が生死を分けます。止血に関しては戦場でも対応できますが、輸血はそうはいきません。輸血が必要な場合は司令部に救出用のヘリを頼む必要がありますが、場合によっては数時間かかることもあり、そうなると処置が間に合いません。また、負傷者の回収は、ヘリが攻撃に晒される可能性も高く、着陸には危険が伴います。”衛生兵が輸血パックを持ち歩いては”とも思いますが、持ち歩くにも輸血用の保存血液は低温での冷蔵保存が必要であり、衛生兵が冷蔵庫と全血液型のパックを持って長期間作戦行動を行うのは現実的ではありません。
そこで、考案されたのが無人機による輸送です。今回、テストに使用されたのはL3Harris社製のFVR-90ドローン。同機は最大402kmの距離を最大12時間連続飛行でき、最大10kgのペイロード能力を持っています。今回のテストで使用された機体には血液を輸送するための冷蔵機能が搭載されています。なので、あらかじめ作戦空域に空中待機させておいて、負傷者が出た場合は速やかに輸血パックの投下が可能です。また、無人機であるため、撃墜されても人的リスクがありません。ドローンによる弾薬の輸送、負傷者の回収といった実験が他にも進んでおり、前線の輸送は今後、ドローンが担うことになるでしょう。
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