米国防省は1日、米国特殊作戦軍USSOCOMが2020年から検討していた武装監視（Armed Overwatch）プログラムの軽戦術航空機として、L3HarrisのAT-802U Sky Wardenを採用したことを発表した。
武装監視プログラムは現在、僻地で情報、監視、偵察飛行に使用されているU-28A Dracoに代わる機体として、近接航空支援、精密攻撃、ISRミッションを実行するために、約75機の有人固定翼航空機を購入するためのプログラムになる。2020年2月に計画が始まり、2021年5月に航空機メーカー5社と総額1,920万ドルのプロトタイプ購入の契約を締結し、5機の航空機を購入。比較検討が行われた結果、米国の軍需企業L3Harrisが開発するAT-802U Sky Wardenが採択された。契約期間は2022年から2029年になり、調達予定数は最大75機になるが、L3Harrisのリリースによれば期間、調達数を定めない形での契約額の上限は30億ドルであると発表している。研究、開発、テスト、および評価のための最初の契約は、1億7,000万ドルになる。2023年に最初のロッド6機が納入される予定だ。
U-28 DRAC（USSOCOM）米国特殊作戦軍USSOCOMは、武装監視活動の一環として中東やアフリカといった厳しい環境下での飛行、監視と打撃を行うための低コストな軽戦術航空機の導入を検討しており、今年5月に航空機メーカー5社[…]
AT-802U Sky Warden
AT-802Uはアメリカの軍需企業L3Harris（L-3 ハリス）と航空機メーカーAir Tractor（エア・トラクター）が共同で開発する軽攻撃機になる。エアトラクターシリーズは世界30か国以上で販売、46年間製造され、 2021年3月に4,000 機目の航空機を納入するなど実績信頼が高い機体。ベースとなっているエア・トラクターAT-802は農薬散布の農業用航空機、空中消火の消防用航空機として開発された機体になる。これを装甲・武装化したものがAT-802Uになり、AT-802U Sky WardenはそれをSOCOMの要件に合わせてバージョンアップしたものになる。
軍用電子・情報システムにおける世界最大手のL3ハリスのシステムを搭載し、ISR、精密攻撃、指揮統制、対反乱作戦を目的にインフラが限られた、厳しく、細分化された戦闘環境で実行するように特別に設計されてる。消防航空機としても使用されている同機は耐久性が売りで防漏燃料タンクを備え、コックピットとエンジン回りは装甲で保護され、高張力鋼管の機体は衝撃を吸収する。2,700kgの戦闘ロードアウトを備え、合計10個のハードポイントにより様々な兵器を搭載できる。戦闘半径は370km、完全武装で6時間の連続飛行が可能。主な武装はレーザー誘導のロケット弾と爆弾。空対地ミサイルのAGM‐114ヘルファイアの搭載も予定している。機体は約7時間で分解され、輸送機に積み込まれ、目的地に到着してからほぼ同じ時間で再組み立てが可能。
AT-802Uは過去に米軍に売り込みをかけていたが、この時は射出座席を装備していなかったため、拒否されていたが、今回は装備されている。
僻地で高価な戦闘機は必要ない
ウクライナとロシアの戦闘でSu-35やMig-29といった高価な戦闘機、対空兵器に注目が集まっているが、AT-802U Sky Wardenは対空能力が低く、ウクライナのような強度が高い戦場では撃墜されるリスクが高い。しかし、米軍がこれまで主戦場とし、同機の運用を予定している中東やアフリカでは絶対的な制空権を握っており、防空システムの脅威がないのでAT-802U Sky Wardenでも絶対的優位性を取ることができる。また、これらの地域は空港や滑走路などのインフラが十分に整っていないケースが多いが、整備された滑走路が無くとも、平地の砂利や砂地でも離着陸が可能な仕様になっている。武装組織や民兵を相手にするにはF-35といった最新鋭の戦闘機は性能過多であり、運用コストも高い上、僻地では返って稼働率が下がることになる。AT-802U Sky Wardenの導入は適材適所を考えた導入になる。
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