独フォルクスワーゲン、軍事産業参入を検討

©Volkswagen

ドイツの大手自動車メーカーVolkswagen(フォルクスワーゲン)社が欧州の軍備拡張を受けて、軍事産業への再参入を検討していると報じられている。

sponser

イギリスメディアのテレグラフなどの報道によれば、フォルクスワーゲン(VW)は、欧州連合(EU)が8000億ユーロ規模の再軍備計画を発表したことを受け、ドイツ軍向けの軍用装備品の製造を再開する用意があると発表した。VWのオリバー・ブルーメ最高経営責任者(CEO)は、ヴォルフスブルクで開催された同社の年次記者会見で潜在的なパートナーからのアプローチはないが、「コンセプト(軍事装備品の生産)を検討する用意はある」と述べた。また、自動車専門メーカーとして武装車両の開発と製造に関して同分野の他社に助言する用意がある旨を述べており、「当社は自動車の専門知識を有しており、助言も提供できるが、現時点ではすべてがオープンだ」と語っている。ドイツ最大の軍事産業企業であるラインメタル社はVWの軍事産業への再参入を支持しているとされている。

sponser

かつて軍用車を生産

ヴォルフスブルクに本社を置くドイツ最大の自動車メーカーであるフォルクスワーゲン(VW)はアドルフ・ヒトラーによるドイツ・ナチス政権時代に国民車(フォルクスワーゲン)を生産するという目的で1937年に独ナチスの労働者組織「ドイツ労働戦線」によって創設された。大衆車を生産するために始まったVWだが、1939年9月に第二次世界大戦が始まると、VWは軍用車両の生産にシフト。小型軍用車のキューベルワーゲン、水陸両用車のシュビムワーゲンをドイツ軍向けに製造。また、初期のV1飛行爆弾の部品製造にも関わっていた。戦時中は戦争捕虜や占領地、アウシュヴィッツ強制収容所から労働者を強制動員して生産を拡大。同社は戦争中に15,000人の捕虜・奴隷を働かせた事を認めている。戦後はイギリス軍の管理下に置かれ、大衆車の生産を再開。1969年には西ドイツ軍向けに小型軍用車輌であるタイプ181クーリエワーゲンの量産を開始し、再び軍向けの車両の生産を再開。1983年まで生産を行っていた。軍需産業への参入となると、それ以来になる。

sponser

苦境のフォルクスワーゲン

フォルクスワーゲン(VW)はBMWグループ、メルセデス・ベンツグループと並び「ドイツ御三家」とも呼ばれる自動車メーカーの最大手で、かつては生産台数世界一にもなった企業だが、近年、売上は減少しており、2023年の売上と利益は両方が減少し、同社は2024年、国内工場の閉鎖と大規模な人員削減を初めて発表、ドイツ国内に存在する10の工場のうち、少なくとも3つを閉鎖し、それ以外の全工場でも雇用を縮小させた上で、残りの従業員の賃金カットを行う計画を発表した。国内工場の閉鎖は見送られたが、2030年までに国内3万5,000人以上の人員削減に合意している。2024年は利益が191億ユーロになると報告したが、これは2023年の225億ユーロから減少しており、業績は良くない。ドイツの自動車産業は中国メーカーとの激しい競争により、年間自動車輸出台数はコロナ前の240万台から約120万台に半減しているのに加え、トランプ大統領がカナダとメキシコに課した関税によって、今後は北米大陸での業績の悪化も考えられる。それを救うのが今の欧州における大幅な軍備拡大だ。これはロシア・ウクライナ戦争の影響によるものであり、いわば戦争特需といっていいだろう。欧州の再軍備の見通しによる需要増加により、ラインメタルやKNDSといったドイツの防衛関連企業は生産を拡大しており、KNDSは閉鎖予定だったアルストム社の鉄道車両工場を買収して、生産ラインを拡張している。VWは当初、閉鎖を計画していた国内工場を軍用に転換する用意があるとされ、VWの高度な生産ラインは大量の車両を生産する事が可能だ。ラインメタル社のアルミン・パペルガー最高経営責任者(CEO)は、VWのオスナブルック工場は兵器工場への転換に理想的な選択肢であると語っている。新たな事業により、VMの財務状況は改善され、リストラの人員も削減されるかもしれない。

sponser
sponser
独フォルクスワーゲン、軍事産業参入を検討
フォローして最新情報をチェックしよう!