WA2000|176挺しか製造されなかった高価な狙撃銃

WA2000|176挺しか製造されなかった高価な狙撃銃

WA 2000は現代では見られない少し変わったデザインをした狙撃銃だ。そのデザインに惹かれて手に入れようと思っても、1980年代に製造されたこの銃を手に入れるのは難しい。なぜなら非常に高価のため僅か176挺しか製造されなかったからだ。

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ドイツの対テロ特殊部隊のために開発された

1972年、西ドイツで開催されたミュンヘンオリンピック期間中に起きたテロ「黒い9月事件」は11名のイスラエルチーム選手団、5名のパレスチナ過激派組織メンバーと1名の西ドイツ警官の死亡という最悪の結果をもって終わった。この不幸な事件は、西ドイツの警察がテロリストに迅速に対応する術を持っていなかったが原因とされ、その後の対テロ特殊部隊GSG9の創設に繋がった。

この件をきっかけにドイツの銃器メーカーのHeckler&Koch(H&K)社は政府を通じて、GSG9装備用のセミオート狙撃銃の開発依頼を受ける。H&Kは自社のアサルトライフルのG3をベースに、高精度、最大装弾数20発を誇るPSG-1(写真上)を開発した。PSG-1は現在も現役で活躍するセミオートスナイパーライフルの代表的な存在だ。しかし、この時、もう一社開発した会社があった。同じくドイツを代表する銃器メーカーのWalther(ワルサー)社だ。

ワルサーも政府から同様の依頼を受けて開発したのがWA2000になる。「狙撃銃のキャデラック」と呼ばれたこの銃はPSG-1に負けず劣らずの性能を有していた。しかし、一部の警察に使われたもののPSG-1に敗北、正式採用には至らなかった。そのため1982~1988年の僅か7年間しか製造されず、その数は僅か176挺と現在では手に入れるのが難しい幻の銃となっている。

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スペック

WA2000はスナイパーライフルでは珍しい発射機構を後方に据えるブルパップ方式を採用している。これにより、セミオートによる連続射撃の反動を抑えている。バレルの長さはPSG-1と同じ650㎜になるが、ストックに発射機構があるため全長は905㎜とPSG-1よりも300㎜も短くなっている。鋼、アルミ、木材で構成された本体の重量は7㎏と8㎏のPSG-1よりも軽い。

WA2000|176挺しか製造されなかった高価な狙撃銃

特徴的なデザインとしてバイポッド(二脚)がバレルの上に配置されており、吊り下げ式になっている。木製ストックはIスタンド付きの一体型になっており、バイポッドと合わせて抜群の安定感と射撃姿勢を保持できる。右利き用で左利き用には設計されていないが、安全装置は左右どちらからでも操作できる。バレルはむき出しになっており、マガジンとフロントサポート以外の場所に接触していない。軽量アルミニウムフレームで固定され、これにより精度が大幅に向上し、剛性と放熱が向上している。

使用する弾丸は7.62x51mm NATO弾、.300ウィンチェスターマグナム弾、7.5x55mmスイス弾になる。装弾数は6発とPSG-1と比べると少ない。

PSG-1と比較した時、性能として劣る点は装弾数ぐらいだ。そもそも一撃必殺のスナイパーライフルにおいて装弾数はそこまで重要ではない。では、なぜWA2000は採用されなかったのか?

口径:7.62mm
全長 905mm
銃身長(バレル):650mm
装弾数:6発
重量: 6,950g
有効射程:1,000m

価格が高い

理由としてあげられているのが価格だ。WA2000は一挺あたり9000ドルになる。当時のレートでいうと最大200万円ほどだ。この高価格がネックで採用を見送られた。とはいってもPSG-1の価格が7000ドルなので、そこまで差があったわけではなく、性能面を考えるとWA2000が採用されてもおかしくなかった。

WA2000は176挺しか生産されなかった希少価値から今では4万~7万ドルと倍以上の価格で取引されている。

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