軍用ヘリにドアが無い、閉めない理由

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photo by us army

映画やゲーム、実物でもそうですが、UH-60ブラックホークやUH-1イロコイなど軍用ヘリって左右のキャビンドアを閉めませんよね。むしろドアさえも付いていないことも。あれって危なくないでしょうか。実際、ドアが無いせいでヘリから落下する人もいるようです。なぜ、ドアを閉めないのでしょうか?

アカデミー 1/35 AH-60L DAP ブラックホーク AM12115 プラモデル

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ベトナム戦争がきっかけ

Hampton Roads Naval Museum

ヘリコプターとして最初に安定飛行を実現したのは第二次大戦時にナチスドイツで開発されたフォッケウルフ Fw61になります。形状としてはオスプレイに近く、2つの回転翼が付いていました。その後、各国でも研究が進み1955年にはフランスでシュド・エスト SE.3130が量産化され、偵察や観測、連絡任務にあたります。そして本格的に戦場にヘリが導入されたのはベトナム戦争になり、1961年に米国が参入してからになります。このベトナム戦争がヘリのドアの運用方法を決めるきっかけになります。

ドアを閉めると暑かった

ベトナム戦争で米軍は兵士と物資の輸送用、負傷者の運搬に大量のUH-1イロコイ・ヒューイを投入します。当初はヘリのドアはきっちり閉めていました。しかし、ドアを締め切ると東南アジア特有の気候で機内が蒸し風呂状態になり、それに耐えられなくなった兵士は窓を開けっぱなしにします。

キティホーク 1/48 ベトナム戦争 アメリカ陸軍 UH-1Dヒューイ プラモデル KITKH80154

地上からの攻撃に対応するため

ヘリは飛行機よりも低速で低高度を飛行します。そのため、地上から攻撃を受ける機会も多く、ヘリを護るために反撃をする必要があります。当初はドアを開けて機内からM16小銃などで反撃していました。次第により強力な機銃やミニガンをヘリに取り付けるようになります。するとヘリのドアが邪魔になります。どうせドアは開けっ放しなのでドアを外すことにします。

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搬入搬出が楽

ベトナム戦争から、米軍はそれまでの航空機からパラシュート降下するエアボーンを止め、ヘリから強襲するヘリボーンを戦術に取り入れます。ヘリはタッチ&ゴーで着陸離陸するので、ドアを開け閉めする暇はありません。物資や負傷者の搬入もドアが無い方が速やかに行え、戦場に居る時間を減らせます。

武装のために機体を軽くする

UH-1イロコイ・ヒューイは当初、輸送がメインでしたが、次第に攻撃ヘリとしての役目も負わせられます。機銃の取り付けから、ロケット弾など重武装化していきながらも輸送任務も兼務しました。武装化して、且つ積載能力を保持するには機体を軽くする必要があります。そこで不要なドアを取り外します。機体を軽くすると同時に機内のスペースを広げる事にも繋がりました。

命を助ける

冒頭でドアが無いことで落下することもあると言いましたが、またその逆で、ドアが無いことで命を救う事もあります。ドアが無いことで脱出が容易になり、危機を救う事があります。

上記のような運用経験の結果から、今でも軍用ヘリは状況に応じてドアを開けっぱなしにしたり、取り外したりしています。

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軍用ヘリにドアが無い、閉めない理由
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