カナダは9日月曜、190億カナダドル (1.9兆円) を投じて88機のF-35A戦闘機を購入し、老朽化したCF-18ホーネット戦闘機を置き換えると発表した。今回、正式に購入契約に署名したことで、この第5世代ステルス戦闘機の購入をめぐる10年近く続いた論争はようやく終わりを迎えた。
カナダのアナンド国防相は記者会見で2026年に最初の4機が王立カナダ空軍に納入され、2027年に6機、2028年に6機、その後も順次納入され、32~34年までにかけて完納され、空軍のF-35部隊は完全な運用状態に入ると述べた。CF-18ホーネットは2032年までに全機退役する。
紆余曲折を経てF-35Aに決定
カナダ空軍の現在の主力戦闘機はアメリカのF/A-18ホーネットの派生型であるCF-18ホーネットになるが、1983年に就役した機体は既に40年が経過している。それもあり、開発に参加していたF-35AをCF-18の後継機として2010年、当時のハーパー政権が決定するも、カナダはNORAD(北アメリカ航空宇宙防衛司令部)とNATOの同盟を果たし、広大なカナダの領土を守る上で長距離戦闘機を必要としていた。求められる戦闘機は戦闘空中哨戒および長距離迎撃の両方が可能でなければならず、マッハ2以上の高速加速だけでなく低速巡航能力も必要だったがF-35Aの戦闘行動半径1200kmというのはそれを果たすには短く、航続距離を伸ばそうにも増槽(燃料タンク)を装着すればステルス性が失われることになる。F-35Aは条件に当てはまらないとして購入には反対意見があった。さらに議会に出されてた65機のF-35Aを147億カナダドルで購入するという予算案も費用の詳細が不明瞭な上、次期戦闘機の検討が複数による競争入札ではなく、F-35Aを開発するロッキード・マーティン社の単独入札であったこと、ハーパー首相の議会軽視発言もあり、紛糾。F-35Aの購入はいったん白紙に戻された。2015年の選挙ではF-35Aの調達が論争となり、F-35Aを調達しないことを公約に掲げたトルドー首相率いる自由党が保守党を破り、勝利し、政権を奪取、F-35Aの購入は完全に立ち消えとなった。
とはいえ、CF-18は老朽化しているため、新しい戦闘機の調達は必須であり、トルドー首相はユーロファイター・タイフーン、F/A-18E/F スーパー ホーネット、F-35A、グリペンEを開発する各社に次期戦闘機の入札コンペに参加するよう要求。カナダは調達、保守コストが安く、運用管理しやすい航空機を必要としていたが、三社が入札から撤退し、最終的にF-35AとグリペンEの2機で争われることに。
ロシアがSu-57、中国がJ-20と第5世代のステルス戦闘機を開発し、世界の主流は完全にステルス戦闘機になったことに加え、NATO、日本をはじめとした西側陣営各国がF-35を調達。更にロシアや中国が軍事力を高め、周辺国への脅威が高まる中、これまでの非対称戦争から、正規軍同士の戦いに備える必要があり、カナダに求められる役割も変わりつつあった。そして、結局、選ばれたのはトルドー首相がかつて公約で購入しないと約束したF-35Aとなった。
Source
https://cqegheiulaval.com/why-canada-does-not-need-the-f-35/