映画などでたまに見るガトリングガンと給弾レールで繋がる弾薬パックパック。有名になったのは映画『プレデター』でM134ガトリングとバックパック背負った兵士が登場。その後の続編の『プレデターズ』でも登場している。大量の弾薬が搭載されたバックパックを背負って、圧倒的火力でガトリングをぶっ放すシーンは爽快だが、実際に軍が使用しているシーンを見た事がない。本当に装備としてあるのだろうか?
弾薬バックパックとは
軽機関銃は通常50発、または100発の弾帯ベルト、ポーチから給弾する。フルオート射撃が基本の軽機関銃は50発、100発といった弾数も直ぐに撃ち尽くし、リロードが必要なるのだが、マガジンのリロードとは違い、フィードカバーを開け弾帯ベルトを装填するなど、ちょっと手間で、リンクを噛んでジャムったりと隙が生まれてしまう。それを解消するのが弾薬バックパックになる。弾薬バックパックには500発以上が連なる弾薬ベルトが搭載されており、弾薬バックパックと軽機関銃は給弾ベルトで繋がれる。給弾ベルトを通して弾薬ベルトが給弾されるので、通常であれば500発撃つ間に行われる4、5回のベルト交換が必要なくなり、途切れることの無い火力支援が行える。
この発想はベトナム戦争からあったようで、当時、米海軍の特殊部隊ネイビシールズがM60E3機関銃と弾薬バックパックを装備していた。
米陸軍のIronMan(アイアンマン)
2011年に米陸軍が開発していたのが7.62mmのM240とMk48軽機関銃用の弾薬バックパックである「IronMan」になる。7.62x51mm弾を最大500発収めることができ、給弾レーンによってM240、またはMk48にリンクされている。M240は通常、射手のガンナーと給弾役のアシストガンナーのツーマンセルだが、弾薬バックパックがあればアシストガンナーが不要になるので、人員削減にもなる。しかし、難点としてはM240は12.5kgと軽機関銃の中でも重く、7.62mmの弾薬は100発あたり4.35kgとなり、銃とバックパックだけで装備の総重量がゆうに30kgを超えてしまう。米陸軍の歩兵の装備は保護具だけで12kg、戦闘装備の標準重量は43kgになるので、弾薬バックパックを背負った兵士の戦闘重量は平均を上回ってしまう。またIronManの製造には非常に費用がかかることが判明し、2年間の実験の後、米陸軍は「このシステムは広範な調達と展開には望ましくない」と宣言し、プログラムをキャンセルしている。
米海軍のAvenger(アベンジャー)
米海軍でも独自の弾薬バックパック「Avenger」を開発している。海が主体の海軍には一見、必要なさそうに感じるが、且つてネイビシールズが使っていたように特殊部隊向けであろう。海軍水上戦センターのクレーン部門によって開発されたAvengerはIronManよりも150発多い、最大650発を搭載できる。弾薬が増える分バックパックは4kgと軽量化されている。内部はアルミなどといった金属ではなく、柔軟素材で作られ岩場などフィールドに適応する。これによって陸軍の課題であった製造コストに関してもクリアしており、通常4000ドルかかるところをアルミニウムで作ると僅か300ドルに抑えることができ、一般的なバックパックの値段と変わらないコストになっている。Avengerは既に何度か部隊への配備実績があるようだが、これに関しては海軍は公式な発表を出していない。そう考えるとやはり、特殊任務を行う特殊部隊が配備しているものと思われる。
MICO – Machine Gunners Assault Pack
装備メーカーのTYR tacticalが5.56mmのM249と7.62mmのM240、どちらでも使用可能な弾薬バックパックMICOを開発・販売している。軍での導入実績は無いようだが、これを使った射撃動画がいくつか上がっている。
Source
https://soldiersystems.net/2014/09/21/us-army-developed-ironman-ammo-pack-costs-more-than-commercial-version-it-emulates/
https://www.businessinsider.com/navy-avenger-ammo-backpack-looks-like-gear-from-predator-movie-2020-9