アメリカでは発射機構を後部に配置するブルパップ式のライフルはあまり人気がありません。事実、米軍では正式銃と採用されたことはありませんし、法執行機関でも採用実績はほとんどありません。そんな米国市場において、一定の人気を誇っているブルパップ式アサルトライフルがあります。それが”Desert Tech MDR(デザートテックMDR)”です。
概要
デザートテックMDRはブルパップ式のスナイパーライフル”SRS”の開発で知られる米国ユタ州のデザートテック社によって開発されたアサルトライフルです。MDRは”Micro Dynamic Rifle(マイクロ・ダイナミック・ライフル)”を意味しています。2014年のSHOTshowで初めて登場。高度なモジュラー設計を採用したため、量産に時間がかかり、実際に発売されたのは3年後の2017年になります。
下部レシーバーと取り外し可能なハンドガードはポリマーで構成され、上部レシーバーは硬度や耐久性を高める硬質アルマイト処理された航空機グレードのアルミニウムで作られています。他のブルパップライフルと同様に、発射機構を後部に配置し、マガジンはトリガーとグリップの後方に位置します。これにより、バレルの長さを保持しながら全長をコンパクトにすることを可能にします。上部レシーバーにはピカティニーレール、ハンドガードにはM-Lokを搭載しています。
モジュラー設計
デザートテックMDRの特徴は高度なモジュラー設計です。バレルやマガジンなどの部品を変更するだけで、複数の口径を切り替えることができ、下記の口径・弾薬の使用が可能です。
1).223レミントン
2)5.56×45mmNATO
3).223ワイルドチャンバー
4).300 BLK
5).308ウィンチェスター
6)7.62×51mmNATO
7)6.5mmクリードモア
これにより、中間弾薬からフルサイズの弾薬に対応し、ミッションに応じてアサルトライフル、マークスマンライフル仕様に口径を変更するなど適応性を可能にします。デザートテック変換キットを使う事で素早く換装ができ、特許出願中の照準システムは、補正する必要なしにゼロインを保持します。
ブルパップのデメリットをクリアする排莢システム
ブルパップのデメリットして発射機構が後ろにある分、排莢口が顔に近く、左右に持ち替えた(スイッチング)際に排莢された薬莢が顔の近くを飛び、当たることがあることです。ゴミが入ることを防ぐダストカバー(防塵蓋)を兼ね備えたデザートテックMDRの排莢システムはこのデメリットの解決策として前方に排莢しています。これにより、スイッチングしても当たることはありません。更に排莢口は工具を使わずに簡単に取り外しが可能で、左右に切り替えることができる両手利きに対応したアンビシステムに対応しています。
民間で人気
デザートテックMDRは米軍の主力小銃であるM16/M4よりも分解と清掃が楽で、バレル長や射程、精度などはSCAR-Hと同等という評価もあり、SCAR-Hより全長が短いので取り回しを踏まえるとSCAR-Hより優れたライフルなのかもしれません。しかし、ブルパップが不人気のアメリカでは軍用、法執行機関での採用という話はあまり聞きません。だが、Gun Geniusの2020年に売れたセミオートライフルのランキングによると、AR系のライフルがランキングに並ぶ中、デザートテックMDRは堂々3位にランクしています。価格が2,000~2,500ドルと他のAR系よりも500ドル以上も高いなか、民間の間では高い人気を誇っています。ブルパップはそのコンパクトさから軍用では車両乗員用の携行武器としても採用されており、コンパクトさが人気の一つかもしれません。また長い射程から狩猟用銃器としても一定の人気があります。
2020年には耐衝撃性ポリマー、トリガー、ガスブロック、コンペセーターが改良された””MDRX”が発売されています。
また、バレル長を11.5インチ(292mm)、全長をFN90と同等の595mmまで短くできる変換キット”Micron”が発売されています。
MDRスペック
重量 | 3.72kg |
全長 | 698mm |
銃身長(バレル) | 410mm |
発射速度 | 600〜650/分 |
有効射程 | 最大900m |
装弾数 | 10/20/30 |