カチューシャと聞くとあなたは何を思い浮かべるだろう?
頭に付けるヘアバンド?AKB48の『Everyday カチューシャ』?それともガルパンに登場するキャラクター?
何を言っている、カチューシャといったソ連の兵器、自走式多連装ロケット砲だ!
ディズニーランドに言って「カチューシャ付ける?」って言われた日にゃあ「何言ってんだバカヤロー!カチューシャは付けるもんじゃねー、放つもんだ!」と心の中心で叫んでる。
第二次世界大戦に登場した恐怖の兵器
第二次世界大戦においてソ連の最強戦車「T-34」と並び称されるほどの活躍を見せたのが自走式多連装ロケット砲になる。カチューシャ(Katyusha)という名前が広く知れ渡っているが、これは愛称で正式には「BM-13」になる。 他に軽量の「BM-8」、重量の「BM-31」が同時期に開発され、これらも総じてカチューシャと呼ばれた。ドイツではロケットの羽音から「スターリンのオルガン」と呼んでいた。
兵器の構造はシンプルでトラック( ZIS-6)の荷台に132㎜ロケットを発射するためのレールを積んで、そこにロケットを搭載して発射するといったものだ。
ソ連では1920年代からロケットの研究が進められてきた。1941年にはロケットを複数装填できるマルチチャージランチャーシステムが開発される。それからトラックに搭載され同年6月に兵器として採用される。カチューシャの利点は移動力になる。当時の長距離攻撃は榴弾砲がメインだったが、自走式では無いため牽引したり、組み立てセッティングするなど手間がかかった。反撃されても直ぐに逃げられない。その点、カチューシャは自走でき、配置後に直ぐに発射が可能。発射後も直ぐに移動再配置できるので反撃を受ける頃にはもう移動している。榴弾や野砲のような精密攻撃はできなかったが広範囲に対する飽和攻撃においては非常に有効で、集中砲火とロケット音で敵の士気を砕き、精密な榴弾砲と組み合わせることでより効果的な攻撃が可能になった。基本編成は発射車両4台、補給車両2台、サポート車両2台の8台車両の編成になる。終戦までに1万台が生産された。
装填に時間がかかる
一気に16発(BM-13)のロケットを発射する攻撃力は絶大だったが、しかし、難点があった。それは装填時間だ。発射後の装填に時間がかかり、次弾発射までに30分以上を要し、結局、次の一斉射撃を行うまで1時間近く時間を要した。
有効射程はBM-13で約8,500mと重砲の約半分になり短かい。その分、敵に近づく必要もあった。しかし、ロケットは航跡雲を残さず、直ぐに移動できる特性もあったため、特に支障はなかった。
名前の由来
カチューシャ(Katyusha)という名前はソ連(ロシア)で女性に使われる名前だ。第二次世界大戦当時、ソ連では『カチューシャ』というタイトルの歌曲が人気だった。歌の内容はカチューシャという娘が川の岸辺で恋人を思って歌う姿を描いており、娘は愛する恋人が兵士として祖国とその人々を守ることに感謝し、それに忠実であることを歌っている。その歌詞は、当時、多くのソビエト男性が妻と彼女を残して戦場で戦っていたこともあり、兵士の間で大人気になり、国民的歌謡曲になった。そんな中、BM-13が製造され、車両の側面には大きな「K」のスタンプが押されていた。これを見た者がカチューシャ(Katyusha)のKだと冗談をいったことからカチューシャと呼ばれることになった。しかし、実際には製造した工場Voronezy KominternのKにだった。
ちなみにヘアバンドの名称としても使われるカチューシャもソ連が由来。しかし、これは日本だけの呼び方だ。ロシアの文豪トルストイが書いた『復活』に女性主人公カチューシャが登場するのだが、それを大正時代に日本の演劇で催され人気を博し、カチューシャ役の松井須磨子が今のC型のヘアバンドを付けていたことから、そのように名付けられとされている。
そのような経緯もあり、日本では多くの人がカチューシャと言われて多くがヘアバンドを思い浮かべると思う。ソ連のロケット砲を思い浮かべるのは私のようなごくわずかなミリタリーオタクだけだろう。